E.T. 20周年アニバーサリー特別版
此れは公開から20年を経た2002年に監督スピルズバーグが
1982年当時のSFXでは技術的に不可能だった部分を修正したものだ。
まずオープニングのユニバーサルのロゴにE.T.が自転車で空を飛んでいる。
E.T.がバスタブで溺れる処や。ハロウィーンのシーンも追加されている。
全体に画質がデジタル・リマスターされ鮮明になっている。
しかし明らかに”ぬいぐるみ”に子供か小人を入れたと思われる
E.T.のフルショットはそのままだ。
その歩きの可愛さは現在のC.G.ならモーション・キャプチャーで
総て出来るが、2002年の技術では無理だったのだろう。
それはさて置き、改めて此の作品を観て気付いた事は
実は此れを観たのは米国ロサンゼルス、封切り間もない頃
ロケで、その地に居た私は空前のE.T.ブームに
とりあえず、劇場に飛び込んだものの
字幕無しでは細かいディテールを理解出来なかった。
それでも子供向けに作られたストーリーだから
だいたいは把握して、ラスト・シーンに涙してしまったが
今回、BSの放映の字幕付きで、やっとスピルズバーグの
本意とする処が良く解った。
作家と言う者は自分の生い立ちを作品に濃く反映させる。
彼の場合は特にそれが顕著だ。
「未知との遭遇」「ジェラシック・パーク」と
彼の映画に登場する家族は何れも母子家庭か父子家庭
米国は離婚率が高いので
アチラで子役のオーディションする場合
家庭の事情を聞いてはいけないルールになっている。
子供の心を傷つけ無い様、周りは気を使うのだ。
此の「E.T.」でも父親は家を出て
メキシコで別の女と暮らしている事を
主人公の少年は知っている。
その満たされない家庭にE.T.が偶然入って来るのだ。
宇宙から仲間と共に地球の植物採集に来たものの
宇宙船に乗り遅れて森に近い少年の家に現れる。
その偶然の訪問者に喧嘩していた兄弟の結束も固まる。
物語の展開は子供向けを意識してか
可成り荒削りで、ツッコミどころ満載だが
それでも許してしまうのは、C.G.技術の向上以前に造られた
イタリア人のカルロ・ランバルディ制作のE.T.の表情の可愛さ。
首が伸びるリモコン仕掛けのロボットだが
アインシュタインやヘミングウェイの目を参考にしたという
何とも愛嬌と哀愁が同居したそれはチャーミング。
エリオット少年の好演と相まって、飼っていたペットを
失くした時の様な切ない感情を想い出させる。
そのエリオット役のヘンリー・トーマスは此のとき11歳。
天才子役と騒がれたが、その後は”子役は大成しない”の
例に漏れず鳴かず飛ばず。
私の記憶に残って居るのはポール・バーホーベン監督の
SF「スターシップ・トゥルーパーズ」の科学者役で登場
クライマックスに巨大宇宙生物のタコの親玉みたいな奴と対面し
”コイツは宇宙人の心が読めるのだ”と紹介された時
E.T.のエリオット少年の成長した姿と
気が付いた観客は、ニヤリとしたはず。
先日の「フューリー」のローガン・ラーマンは稀で
子役からそのまま成長し成功するのは、とても難しいのだ。
おしゃまな末娘役のドリュー・バリモアは
ハリウッドの麻薬中毒患者の最年少を一時記録したが
今は立ち直り、女優兼プロデューサーとして
「チャーリーズ・エンジェル」等で大活躍している。
「スター・ウォーズ」や「インディ・ジョーンズ」の
リメイクや続編を作るのが盛んだが
此の「E.T.」だけは、恐らく無理だろう。
それは皆が記憶にとどめ、仕舞って置きたい
無垢な世界だからだ。