ビッグ・アイズ(2015)
SFXを多く使ったファンタジーを得意とする監督
ティム・バートンにしては地味な映画である。
それでも平気で人間の手をハサミにしたり
「アリス」で奇妙な頭でっかちの女を登場させる
彼好みの”絵”を描く女性の話に
彼の”危ない性癖”が反応したと思われる。
上のポスターが実に此の映画の内容を表現している。
まず真ん中の絵、大きな目をした女の子が書かれている。
それは”ビッグ・アイ”と呼ばれ
1950年代に全米の人々が好んで買った作品である。
描いたのは、その絵を持っている女流画家。
しかし彼女は作者であるのに
その外側を持っている夫のゴースト・ペインターであった。
それは夫の策略で男の画家のほうが絵が売れると騙され
更に売れてからも家庭内暴力で、それを隠されたからである。
だいたい此の絵自体が可愛い少女の絵の筈だが
どこか陰湿な影を感じさせるもので
何故、米国でブームになったのか?が不思議。
それは夫の詐欺師まがいのセールスに依るとなっている。
彼は画家と言っているが実は元・不動産屋
ことば巧みに彼女を誘惑し
彼女の作品、そして彼女の世界を盗んでしまったのだ。
此の夫を演じるのがクリストフ・ヴァルツ。
先日の新しいターザン映画の敵役だ。
その憎々しさは今、ハリウッドで悪役ナンバーワンそのもの。
映画は敵役が強いほど面白いのが定説だが
これほど卑怯で卑劣なキャラクターを生み出す才能に
此の俳優の凄さを感じる。
監督ティムの、お抱え役者ジョニー・デップも彼には叶うまい。
主役を実力派若手女優エイミー・アダムスが演じ
どんどん心を蝕まれてゆくの女流画家の過程を見せる。
特にノイローゼとなりスーパーマーケットの客から
店員まで全部が”ビッグ・アイ=大きな目”になる場面が圧巻。
ジョン・シュレジンガーの名作「イナゴの日」(1975)を思い起こさせた。
ラストは彼女が訴訟を起こし
全ての絵は自分が描いた事実を裁判所裁判所でブチ撒け
それに夫が巧妙に反論し対決するのも此の映画の見どころ。
自分でもナプキンに描いた絵などの展覧会をしている
ティム・バートンならでは世界だろう。