藤沢周平TVドラマ・シリーズ
「遅いしあわせ」
これまで藤沢作品は海坂藩を舞台にした
武家社会ものが映画やテレビで何度も作られているが
此れは町人が主役の2本立て。
どちらも地味な内容ながら見応えのあるものだった。
まずは壇れい主演の「遅いしあわせ」
原作に近い年齢の壇れいがイメージに良く合って無理がない。
話は、めし屋の女房が
小さい頃から面倒を見ているグレた弟(柄本佑)の博打の借金で
嫁ぎ先に居られなくなり、夫と別れ
貧乏長屋で母の面倒を見て居るが
弟が再び借金をこさえ、その元締めのヤクザに追われ
彼女も肩替りで売り飛ばされそうになるが
いつも側で彼女を見守っていた桶職人が
身体を張って助け出す。
此の桶職人を加藤雅也が高倉健の様に好演。
弟を本気で心配してくれる男の想いに
やっと気づいた女は心を開く
それは彼女に、やっと訪れた”遅いしあわせ”
脚本は勝新のTV座頭市シリーズを多く手がけた中村努
そして監督は池広一夫と同じ大映の生き残り80歳のベテラン井上昭。
これまでも「鬼平外伝」等を手堅く演出して居る。
そして2本目は
「冬の日」
此の役者の「レモンハート」は脚本や演出が酷すぎてアウトだが
「前進座」の血を引く梅雀は時代劇でこそ生き返る。
話は、ある冬の日
男が幼い頃に憧れていた奉公先のお嬢さんと
何十年ぶり居酒屋で再会する。
しかし彼女の落ちぶれた様子に可哀相で声もかけられない。
(女を演じた高岡早紀が哀しげで、とても良い)
後日、店の女主人に
(女主人を演じた藤田弓子の優しさが光る)
彼女を食い物にしているダニの様な男の存在を聞き
居ても堪らず、男を追い払うが
ヤクザな男は腹いせに彼の店を壊してしまう。
殴られ気絶した彼が目が覚めると女。
男は、女に此の店をずっと一緒にやらないかと・・・。
社会の底辺で辛酸を舐めながらも
健気(けなげ)に生きて来た男女に
最後に希望を与える此の結末は
藤沢周平作品の中でも特に素晴らしい2作だ。
贅沢なキャスティングは脇役に
本田博太郎、酒井敏也、山田純大など適役。
もはや時代劇は死んだと言われながらも
こうして確かな時代考証で見事な映像を作れる
撮影、照明、美術etc...
BBC制作の「名探偵ポアロ」シリーズにも負けない
優れたスタッフが居ることが日本人として、とても嬉しい。