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リチャード・ウイドマークが扮する昔気質の保安官と
急激に近代化した西部の街の市民との対立が描かれている。
此の映画が米国映画史で特別な存在なのは作品では無くて
監督の名前”アラン・スミシー”
此れはハリウッド映画協会が公然と発表した偽名
つまり先に監督ロバート・トッテンが主演のウイドマークと
ソリが合わず降板してドン・シーゲルが代わって演出したものの
ドンも此れは私の名前はだすな!と拒否したから
映画協会は”アラン・スミシー”と奇妙な名前を創作したという訳。
まあ、そんな訳で完成度は低いのだが作品として
不思議な魅力を持った西部劇だ。
冒頭から主題歌とともにジャズシンガーのレナ・ホーンが登場
スタイリッシュな映像で、アメリカン・ニュー。シネマの設え。
そして、これ以上の悪役面は無いというリチャード・ウイドマークが
意外にも保安官役で情け容赦もなく卑怯な奴を撃ち殺す。
それが発端となって、それまで彼を保安官として
雇っていた市議会のメンバーは、正当防衛を超えていると
彼を罷免をしようと対立する。
此の対立の構図が、今一つ明確に描かれてい無いのが
此の作品の欠点だが、それでも西部劇のカウボーイ達の中に
初めて車が登場し、議事堂が大きく建てられた街に
酔い潰れて自分の事務所の牢屋で寝てしまう保安官は
時代遅れなのは、他の映画でも出てきた。
ともかく、街の裏の部分を知りすぎていた
保安官リチャード・ウイドマークは”最後のガンファイター”として
格好良く殺され街の近代化は進むというラスト。
あっネタバレしちゃった(御免)
もう少しで西部劇の名作になったのに惜しい作品だ。
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"恋泥棒”ならいざ知らず"牛泥棒"なんて
野暮ったいタイトルの西部劇は聞いた事もない。
果たして日本未公開、それもその筈
作られたのは太平洋戦争末期
日本が敵国の映画なんて輸入する訳がない。
輸入されたってポスターはカラーでも映像はモノクロだし、
此んな内容では誰も観に行かないだろう。
その内容とは、当に題名のまんま”牛泥棒”
牛泥棒を西部の町の人々が追いかけて捕まえ、
裁判にもかけず、その場で吊るし首にする話である。
西部劇らしい撃ち合いもインディアンも出てこず、主役のヘンリー・フォンダの活躍もなく只々彼はそのリンチに立ち合わせられるだけ。
彼が此の後出演した、シドニー・ポラック監督の法廷物「十二人の恐れる男」に近い、シリアスな社会派ドラマである。
1943年と言えば当時の日本は終戦間近、竹槍で本土決戦の用意してた頃。
アリゾナで原爆実験を重ねているのと並行して
こんな真面目な映画を作っていたアメリカとは、一体どんな国なんだ?
まあ、ナチスに占領されながら「天井桟敷の人々」を撮っていたフランス人も凄いが・・・。
それは兎も角、牛泥棒に間違われた男3人は、吊るし首にされた後、無実が証明され、その中の一人が妻と子供に宛てた手紙をリンチした男達に、最後まで反対したヘンリー・フォンダが読み上げるという、なんとも虚しい結末だ。
多分、アメリカでも此んな映画は当たらなかったろう。
でも作った監督ウイリアム・A・ウエルマンの名前は
此の"牛泥棒"と共に記憶しておこう。