「牛泥棒」(1943):ウイリアム・A・ウエルマン監督
"恋泥棒”ならいざ知らず"牛泥棒"なんて
野暮ったいタイトルの西部劇は聞いた事もない。
果たして日本未公開、それもその筈
作られたのは太平洋戦争末期
日本が敵国の映画なんて輸入する訳がない。
輸入されたってポスターはカラーでも映像はモノクロだし、
此んな内容では誰も観に行かないだろう。
その内容とは、当に題名のまんま”牛泥棒”
牛泥棒を西部の町の人々が追いかけて捕まえ、
裁判にもかけず、その場で吊るし首にする話である。
西部劇らしい撃ち合いもインディアンも出てこず、主役のヘンリー・フォンダの活躍もなく只々彼はそのリンチに立ち合わせられるだけ。
彼が此の後出演した、シドニー・ポラック監督の法廷物「十二人の恐れる男」に近い、シリアスな社会派ドラマである。
1943年と言えば当時の日本は終戦間近、竹槍で本土決戦の用意してた頃。
アリゾナで原爆実験を重ねているのと並行して
こんな真面目な映画を作っていたアメリカとは、一体どんな国なんだ?
まあ、ナチスに占領されながら「天井桟敷の人々」を撮っていたフランス人も凄いが・・・。
それは兎も角、牛泥棒に間違われた男3人は、吊るし首にされた後、無実が証明され、その中の一人が妻と子供に宛てた手紙をリンチした男達に、最後まで反対したヘンリー・フォンダが読み上げるという、なんとも虚しい結末だ。
多分、アメリカでも此んな映画は当たらなかったろう。
でも作った監督ウイリアム・A・ウエルマンの名前は
此の"牛泥棒"と共に記憶しておこう。
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