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MG5 ブランコ：草刈正雄

此れもモービル石油CMと同じ

会社の先輩ディレクターYさんが企画演出した。

それまでの常識を破り音楽を一切使わず

感覚的な音響構成で勝負している。

時代はCMの創成期

”誰もやっていない新しい事”を目指す雰囲気が

ディレクター達に満ち溢れた学校の様な会社だった。

ところで此れは余談だが

先日登場した先輩・山中弘光さんと

偶然、石垣島ロケで一緒になり

泡盛を飲み過ぎて道路に寝て居たら

通りかかった、お巡りに捕まり

石垣島警察署へ連行され調書を取られた。

お巡りの「名前は？」の質問に

とっさに私はアドリブで「草刈正雄」

すると山中さんは「蟇目良」と答えた。

「草刈正雄」も「蟇目良」も当時人気のCMタレント

その頃の石垣島のTVはNHKしか入らず

「何しに石垣島へ？」の質問に

「ハイ、CMの撮影で来ました」と云う返事に

「CMって何？」と聞かれてしまった。

「まあ、宣伝のようなもの」と答えるしかなかったが

調書に、私は”草刈正雄”が書けたが、

山中さんは”蟇目”という字が書けず

「蝦蟇みたいな字、お巡りさん読めるかな？」と

酔ったふりをして誤摩化し、何とか釈放された。

石垣島警察の調書に草刈正雄と蟇目良の

名前が残ったかどうかは定かでは無い。

その先輩・山中さんだが、後日、一緒に再び

新宿ゴールデン街で飲んで、私は彼の笹塚のアパートへ

泊めて貰う事になったが、部屋の鍵が見つからず

同じ笹塚の線路の向こう側に住んで居た

やはり先輩Yさんのアパートへ

泊めて貰いに行った処、彼は生憎と留守。

それで彼の大家さんを真夜中に起こし、

事情を話したが、その大家さんも流石に

簡単に鍵を渡してはくれず

（それはそうだろう見た事も無い２人なのだから）

身分証明と明日、朝には必ず鍵を返すという

念書を彼に書かせようとした。

それに彼は、”家主さんに誓います”を

私が覗くと

”家守さんに誓います”と書いていた。

それで彼のニックネームは暫く

”ヤモリさん”に成った。

考えれば自分の大家を起こせば良いと思うが

何故、遠い線路向こうの先輩Yさんのアパートへ

わざわざ歩いて行ったのか？、山中さんは

もうとっくに亡くなって、今は知る由もないが

あの世で彼に再会したら、それを是非聞いてみたい。