2016年10月9日日曜日

名探偵ポアロ・五匹の子豚
此の作品では通常の脇役ヘイスティング大尉も
秘書レモンも登場しない。
導入が劇場映画の様に7歳の可愛い少女が
ベランダに居た父母と仲良く写真に納まるという
幸福な場面から始まる。
しかし、その直後
母親が夫殺しの罪で絞死刑になる残酷な場面に繋がる。
その少女が14年後、渡された母親の遺書に
自分は無罪だと書かれていたので
その真相の解明を、ポアロに依頼してくる。
美しく成長した娘に見とれるポアロのシリアスな表情は
いつものポアロのユーモアも無く
14年も前の事件に”灰色の脳細胞”を働かせる
俳優デビット・スーシェには珍しいリアルな演技を感じた。
殺された夫は画家で、芸術家らしく奔放な生き方をしていて
その事件の時もモデルと浮気をしていた。
それを妻が嫉妬し、毒入りビールを飲ませて殺したという事になっている。
ポアロは当時の関係者に聞き取りをして、事件の真相に迫って行く。
その関係者が画家と関わりがあった5人に絞られ
マザー・グースの「五匹の子豚」が、此の題名に引用されている。
例によってアガサらしく、疑えば5人それぞれに殺人の動機はある。
そこには男女の愛と憎しみが織物の様に編み込まれ
屈折した家族愛が丁寧に描かれる。
犯罪推理と並行して、生々しい人間ドラマが進行して行く
・・・とは云え、名探偵ポアロの面白さは
観る者を、はぐらかすドンデンに継ぐドンデン返しの展開
此の作品も5人5様の殺人方法を推理させる。
まあ、ルールとして、犯人は教えられないが
演出家の”狙い”は犯人に探しではなく
先に云った様に愛と憎しみを持つ、それぞれの人間の”性”を
描く事に、此の作品は成功している。
BGMにサティの”ジムノペティ”がさりげなく使われているのも
それぞれの心の闇を表現するのに効果的だった。
最後の最後、ポアロが娘を見る優しい表情がなんとも素晴らしい。
それだけでも此の作品は見る価値が有る。

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