宇佐美・八幡様の秋祭り
海は真っ暗で、何も見えないが
此れは、その裏通りの八幡様の山車だ。
此のところ夜になるとトントコトントコと
太鼓の音が遠くから聴こえて
子供が秋祭りの練習をしているのだなと思っていたが
今夜、近くを通ったら此んな山車が出ていた。
綺麗にライトアップされ
雨上がりの重い木立ちを華やかに彩って居た。
私は子供の頃、祭りが楽しみだった。
隣りの爺さんが煙草屋を営みながら
日本画の絵描きもやっていた・・・
いや、絵描きだけでは食えないので
煙草屋もやっていたと云うべきか?
その絵の具を使って町内の山車の飾り付けの紙の花を
臨時アルバイトとして彼が全部作くらされ
それが店先に花が咲いた様に干されて
祭りが近いと私はワクワクした。
私は通信簿にいつも”協調性が無い”と
書かれたくらいだから、山車を引く子供の列に加わらず、
密かに山車の中に乗り込んで幕の内側から
ずっと流れる町内を眺めるのが好きだった。
そうすると、いつもの町も何処か違って見えたものだ。
また初午の季節には、ウチのお稲荷さんの参道用に
その煙草屋の爺さんが、行灯に川柳と絵を沢山描いてくれ
その絵は、今思えば大津絵の様なタッチで
とても愉快で面白く思えた。
その爺さんは煙草屋の店内に、大きな土鉢で
金魚を飼い、水面には蓮の花を浮かべ
様々な色の絵筆を使い、画布に描いていた。
それも今思えば正統派の日本画の作品であった。
最初は外から眺めていた私も、何時しか店に入り込み
終日飽きもせず、それを眺めていたものだ。
それを爺さんは嫌がりもせず、
子供の居なかった彼は時々、飴までくれた。
確か小学3年位だったか、まだ父が生きていた頃
図画の授業で描いた絵に良い点数を貰った私を連れて
父は隣りの爺さんに、その絵を見せに行った。
それは早く死んで、想い出が少ない私の父の記憶の一つだ。
祭り囃子はトントコトントコ、心の奥の遠い風景が蘇る。

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