2014年12月13日土曜日

ミネソタ大強盗団(1972)
此れは隠れた名画としてマニアの間では噂になっていたもの。
題名も地味だし、名だたるスターを使っていないので
西部劇ながら、「明日に向かって撃て」や
「ワイルド・バンチ」の様に日本では全くヒットしなかった。
それでも映画史上のカテゴリーでは、此の作品
”アメリカン・ニューシネマ”に属されている。
監督は、此れが初監督だったフィリップ・カウフマン。
此の後「ライト・スタッフ」や「存在の耐えられない軽さ」で
彼の才能にハリウッドは高い評価を下したが
此れは、それ以前の作品だ。
自ら脚本も書いた緻密な構成に、導入の斬新さ
意表を突く展開は、今回初めて観た私に
公開が1972年という古さは、微塵も感じ無かった。
話はブッチ&サンダースと同じく
時代遅れのカウボーイ達が
徒党を組み銀行強盗をするもの。
此の作品が他と違うのは西部劇につきものの
格好良いヒーローが居ない事。
どのカウボーイも間抜けで正義感も乏しく
内輪もめばかりして誰ひとりとして
観ていて感情移入出来ない奴ばかり
行き当たりばったりに銀行を襲い、金を奪い
売春宿で女を買いドンチャン騒ぎ。
それでも画面に引き込まれるのは
それぞれの人間描写の見事さ。
7,8人のならず者が実にリアルに描けているのだ
カメラはクリント・イーストウッドお抱えの
名手ブルース・サーティス。
イーストウッドは此の映画に惚れ込み「アウトロー」の
脚本・監督にフィリップを抜擢したが彼の完全主義に
飽きれてクランクイン直後クビにしたとか。
とにかく当時の精密な時代考証から、雨風の空気感を
取り入れたドキュメンタリー・タッチの映像は
西部劇なのにモダンな感覚を感じさせ
ワクワクする様な興奮を覚える。
そして、暴れ回って騒いだカウボーイ達の末路が
荒野に沈んで行く夕陽の様に切なく哀しい。
当時、泥沼のベトナム戦争を挟んで
社会に閉塞感を感じていた米国民の心情を反映した
”アメリカン・ニューシネマ”ブームだったが
その戦争の終結とともに、国民は明るい希望を求め
ハリウッドはC.Gを使った「スター・ウォーズ」
「インディ・ジョーンズ」など子供相手の解り易い映画を
量産して、そのブームは終わりを告げた。

それでも今の世界不況や、相変わらずの地域紛争は
あの当時が”デ・ジャブ”の様に蘇り
先が読めない展開に、アン・ハッピーエンドの
此んなアメリカン・ニューシネマ西部劇に
何故か心が響くのだ。

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