「怪談・昇り竜」(1970):石井輝男監督作品
此の監督は高倉健の「網走番外地」シリーズで
東映のヒット・メーカーとして名を馳せた人であるが彼には
本来”ケレン味”のある作品思考があり、東映から離れフリーとなって
色物時代劇「徳川女刑罰史」に「江戸川乱歩・恐怖奇形人間」と、
完成度は兎も角、当時の日本映画では有り得ない"変な作品"を作り続けた。
そして此の作品は日活で。
デビューした太田雅子から名前を変えて「野良猫ロック」シリーズで、
ブレイク中の梶芽衣子を主演に
"任侠物"に"ホラー"を組み合わせた。
まあ”野良猫ロック”から”黒猫のたたり"の猫繋がりと言う訳(笑)
その脚本作りの大胆な運びは観ていて呆気に取られるほど。
彼女がヤクザ映画の仁義を”手前、生国と発しますは”と女刑務所内でタンカを切ったと思えば、
監房の窓から顔を出す黒猫にキャーッと怯えるという。
もっと無茶苦茶なのはキャステイング。
彼女に対抗して登場する盲目の女ヤクザに”ホキ徳田”。
彼女を知る人は今はもう殆ど居ないと思うが
「北回帰線」の作家ヘンリー・ミラーの5番目にして最後の妻
1965年に渡米LAの和食レストラン”インペリアルガーデン”で
ピアニスト兼ジャズ歌手をしていた所をミラーに身染められられたという
歳の差46歳に離婚して日本に戻って来たところを
石井輝男が何を思ったか抜擢。
およそ"座頭市"とは程遠い彼女の芝居が笑える。
おっと笑っちゃいけない此れはホラー映画だった。
今、舞踏家の田中泯が「国宝」などで受けているが
何と、その先輩の土方巽が此の映画には狂言回しで登場。
”暗黒舞踏”は何たるか?を大スクリーンで見せてくれるのだ。
やたら生首が並ぶ台に載る彼の白塗りの顔は、やけに馴染んで
エログロの巨匠監督・石井輝男の面目躍如!
キャスティングには懐かしい大辻司郎も出て来る。
早目に自ら命を絶った此の個性的なバイプレイヤーは
市川崑作品に良く使われた怪優だが
此処では悪役として存在感を示し
東宝から出た佐藤允も影が薄くみえるほど。
兎に角、こんな滅茶苦茶な映画が作れた時代は
果たして良かったのか?酷かったのか?


0 件のコメント:
コメントを投稿