2025年6月7日土曜日

「ナチスになったユダヤ人 名前を捨てた“少年”の人生」
1941年ナチスドイツが侵攻したベラルーシに家族とはぐれたユダヤ人の少年がいた。生きるためにアイデンティティーを偽った彼は、金髪や青い目から「アーリア人」と誤解され、ナチスのマスコットにされる。その後、ラトビア人家庭に引き取られ、オーストラリアに移住した彼は、戦後50年を過ぎた頃、ついに家族に秘密を告白。本名探しが始まるのだが…。 原題:THE JEWISH NAZI(オーストラリア 2024年)2025年6月4日放送2024年 オーストラリア MINT PICTURES/SBS制作NHKオンデマンドより

まるで映画のような話である。
実際に後日フランスから映画化の話があったらしい。
でも主人公である彼は現在亡くなっていて、映画化されてはいない。
映画といえば先ず、思い出すのはロバート・ゼメキス監督の
「ホレストスト・ガンプ一期一会」歴史に翻弄された男の数奇な人生。
いやアメリカインディアンと白人社会を行ったり来たりした男
アーサー・ペン監督の「小さな巨人」の方が近いかも知れない。
しかし、彼の場合はユダヤ人でありながら、ナチスに保護され
その容姿からナチスの”マスコット”としてプロパガンダに利用された少年である。
運よく生き延びて戦後を迎え、実は私はユダヤ人だったと告白。
孤児なのでラトビア人夫婦に養子として迎えられ
オーストラリアに移住、結婚して子供も出来ている。
その子供達も皆、大人になり父親の事を
ドキュメンタリーでは、それぞれ話している。
しかし何とも興味深いのは、その本人の語る実像が曖昧なのである。
夜中にうなされて起きる程、凄まじい過去を持つ男の証言は
二転三転する。
終いには本当に彼はユダヤ人なのかも疑わしい。
子供の頃から嘘つき、その場限りの出任せで、
ずっと生きて来たのでは無いか?とすら思えてしまう。
今はオックスフォードに居る息子が
父親に聞いた話として書いたノンフィクション小説
「マスコット」がベストセラーになる。
しかし、その内容は真実では無いと反論する人も多い。
真実はクロサワの「羅生門」では無いが”藪の中”なのだ。
”それで幾らくれるんだ?”と自分の話の映画化に
ギャラを欲しがる彼は正に守銭奴、皮肉にもユダヤ人らしいが
人間の弱さ、しぶとさを持つ彼の数奇な人生は、
監督なら誰もが映画化したがるだろう。

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