その5"潜水艦”
映画「Uボート」が日本で初公開され大ヒットしている頃の話。
CM監督は演出だけでなく企画も頼まれる事もある。
先輩の友人から頼まれ、企画からやってほしいと。
商品はバスタブ。
メーカーは忘れたが新製品で表面の瑪瑙(メノウ)色が特徴だと。
瑪瑙とはトルコ石に似たブルー。
その色をメリットにしたCMを作ってほしいと。
それで私が考えたのが先の映画「Uボート」のミニチュアを、そのバスタブに潜航させ、その潜望鏡からバスタブの色を観ると言う、途方もないアイディア。
まあ、それだけではつまらないので
艦長と乗組員が交互に潜望鏡を覗くのだが
潜望鏡がズレて二人は別のものを観ていると言うギャグ。
まず、映像は深海を潜航する潜水艦から始まり。
次に潜望鏡に映る映像(丸くマスキングされた)深海。
その次に何故か女体(クローズアップされた部分)
”艦長、先方に何か美しいものが・・・”
”なんだ、どれ見せてみろ、おう何と美しい瑪瑙色!”
”えっ、私には白い、いや肌色に見えますが・・・”
”何を言うんだ、これは瑪瑙色というのだよ”
”いや、ワタシには肌色にしか見えませんが”
とオフで聞こえる会話に合わせ
映像はバスタブの色と女体が入れ替わる古典的なボケギャグ。
まさか、こんな馬鹿な企画が通る筈はないと思ったら、
すんなり通ってしまった。
そして問題は此れの撮影現場。
ミニチュアの潜水艦は小物製作会社に発注して可愛らしい 今でいうフィギュアの潜水艦が出来上がった。
海中シーンの撮影用にアクリルの丈夫で大きな水槽を特注した。
何故丈夫かと言うと女体をそこに入れるからだ。
女体は、制作さんが新宿のヌードスタジオのモデルを探してきた。
どうやって口説いたんだろう?
朝から照明をセッティングして先にモデルさんを撮り始めた。
此れが意外に難しい。
CMコードというのがあって乳首、尻の割れ目はアウト。
それを避けて女体の美しさをフレーミングするのが至難の技。
彼女に身体の向きを水槽の中で左に右に替えてもらう。
その度に、見てはいけない海蘊(もずく)の様なものが
否応無しに撮影スタッフの目に入ってくる。
ライティングは下からもしているから水槽は底も透明。
そこにはペタッと鮑(アワビ)の様なものが貼り付いては拡がり。
途中、モデルさんが上のライトが熱い!というので
誰かが新聞紙で端午の節句の紙カブトを作り彼女に被せた。
とにかく彼女が可哀想と一生懸命の優しい男たち。
しかし、あれっ朝は5.6人の撮影クルーだったのが
カメラの後ろに関係ない男達が20人以上増えている!
撮影所を日活にすればロマンポルノで慣れてたのかもしれないが、
其処は大映だった(笑)
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