親がシッカリし過ぎて、あれこれ世話焼きすぎると
子は物事の判断が遅れ中々成長しない。
可成り前の話だが
浅草の雷門前のビルの地下にモダンジャズの店が出来た。
まあ、モダンジャズは今の様に洒落たレストランのBGMでは無く
少し臍曲がりが聴くマニアックな音楽だった。
その店は広さ四畳半もないビルの地下倉庫を改造し
カウンター1列の狭い空間に大型冷蔵庫位のスピーカーを2対無理やり入れ、
定年サラリーマンが始めた店だった。
客層は直ぐ近くの大衆酒場の神谷バーとは違い
スピーカーの音量が大きいので静かにコーヒーや酒を飲む人が多かった。
4時5時から酒が飲む奴はどんな職業なんだと思ったが、
よく顔を合わせるにつれ、次第に彼らの素性も分かって来た。
お坊さん、歯医者、肉屋の若旦那それにCMディレクターの私。
だいたいモダンジャズ好きは、やれマイルスはいつの頃が良いとか
セロニアスモンク以外は認めないとか、
自分だけが"最高のマニア”と思っている排他的な奴が多いのだが、
年齢が近い(当時50歳前後)せいもあり、
4人はいつの間にか仲良くなった。
その日、店の階段を降りていくと何やら美味しそうな匂いが鼻に飛び込んできた。
その店はナッツやチョコレートだけ、食事は出なかったから不思議に思った。
暗いカウンターのスポットライトに浮かんだのはジュージュー湯気の上がる焼肉。
どうやら肉屋の若旦那が二三軒隣りの自分の店の肉を
わざわざ焼いて運んできたらしい。
そう言えば肉屋の2階は焼肉レストラン。
連日、店の前には客が列をなす人気店。
父親は一代で大きなビルを建てた人。
”今日はウチは休み、安くて良い肉があったので皆さんに、お裾分けしようとネ”
ビールやウイスキーの水割りで、あっという間に、それは我々の口の中に消え、
我々のもっと食べたい顔を読み取ったか彼は
”ちょっと待って”と階段を駆け上り消えた。
”流石だね行列が出来るはずだ""プロは焼き方も上手”とか話してる間に
”ハイお待ちどう様”と今度は更に大盛りで。
”出がけにお袋に見つかっちゃってさ、何してるの?と聞くから、
友達が美味い旨いと言うから持ってくんだよと言ったら
お前は騙されているんだよ!とお袋言いやがんの、
もう50過ぎの息子にだよ、まったく!"
その美味しい焼肉を頂きながら我々は
"騙してない、本当に美味い!ホントに騙してない!”とモグモグ(o^^o)
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