2016年3月30日水曜日

Mr ホームズ (2015)
TVシリーズ「シャーロック」は
ホームズ役ヴェネディクト・カンパーバッチ人気で
新作も作られた様だが
此れは晩年のホームズを小説にしたミッチ・カリンのオリジナル
「Mr.ホームズ 名探偵最後の事件」を映画化したもの。
”最後”と云うほどの事件では無い。
只、依頼された事件は解決したものの
その結果に自分が深く傷つき引退
それ以降、ロンドンから遠く離れた田舎で
家政婦と、その息子と暮らし始めたが
どんどん老いて行く身に恐れを感じ
薄れ行く記憶を便りに、その最後の事件の小説を
書き始めるというのが大筋。

「ロード・オブ・ザ・リング」のガンドルフ役
現在76歳の俳優イアン・マッケランは
特殊メイクをしなくとも、それらしい皮膚感で
その虚ろな表情が、如何にも93歳のホームズらしいのは
彼の持っている性癖から来るものだろう。

実は、最後の事件は3つ有り
ここからネタバレ。

一つ目は、その引退を決意した事件
妻が子供を流産したのを気にして
霊媒師の所へ通うのを尾行して欲しいと云う
夫の頼みに、その尾行をホームズが見破られ
逆に彼女を追い込んで自殺させてしまう。
その時に彼と彼女に通い合った心は
孤独な者同士の”愛”の様なもの。
しかしホームズの性癖は彼女を受け入れられなかった。


二つ目は並行して描かれるシャーロックの日本への旅。
それは記憶力に効くという山椒を手に入れる為。
でもガイドをしてくれた日本人ウメザキ(真田広之)は
実は彼に恨みを持っていた。
それは彼の父親が英国に居る時代、
彼が帰国しようとしたのをホームズが
手紙を書いて止めさせたというというのだ。
自分を父親から引き離したホームズに
何故そんな事をしたのだと彼は迫る。
まあ、此のエピソードは冗漫で
画面に映る日本と、日本人はイイ加減
満州だか中国人か判らないほど酷く
健気に英語を話す真田広之が空回りしている。


そして三つ目は現在進行形で進む
家政婦と、その息子でホームズに憧れる少年との関係。
ミツバチの世話を手伝わせているうちに
少年が蜂に襲われ死にかける
恨んだ母親は、貴方は息子を私から奪った!
と激しく責め立てる。
此の片親の一人息子を取られると思い、
彼と悉く、歪み合う家政婦役の女優が巧い。

此の3つの事件に、老いたホームズは
此れまでの自分の”過ち”を素直に認め
自分を含め、人々との関わり方を変えて
生きて行こうとする・・・。
盗難も殺人も起こらない、とても地味な事件だが。
そろそろ、老いというものを感じている私には
しみじみとする良い作品だった。

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