2015年12月28日月曜日

囚人番号A26188~ホロコーストを生き延びて
此処で以前にも載せた「映像の世紀」で
ヒットラーの野望とアウシュビッツ収容所は出て来たが
先日、再放映されたBS-1ドキュメンタリー・シリーズの
此の作品は更に衝撃的だった。

高齢だが知的で、美しい髪と赤い唇が艶やかな
ポーランド系ユダヤ女性ヘニヤ・プライヤーの悲惨な過去は
彼女が淡々と語る、いや淡々と言うより
地獄を見てしまうと人間は、かくも感情が表に出なく成るのか?
と思えるくらい証言の内容は凄まじい。

大きな靴工場を経営する父親に何不自由無く
育てられた少女が、いきなりポーランドに侵攻して来た
ナチスに依って家族を引き裂かれ
家畜用の貨物列車に無理矢理押し込められ
鉄条網に囲まれたホロコーストで
強制労働をしながら各地を転々とさせられる。
どんどん同胞は殺されるか、栄養失調で死んで行くが
彼女は体力が有ったのか運が良かったのか
とにかく戦争が終わるまで生き延びる。

収容所の中の彼女の写真は残っていないが
観るに耐えない骨と皮だけのユダヤ人と死体の山と
彼女の恵まれた少女時代の写真とのコントラストが
運命の過酷さを感じさせる。
彼女はホロコーストから救い出された後も
フランスからパレスチナのシオニズム運動に参加
キブツで知り合った男性と結婚、今は南アフリカに
家族に囲まれて穏やかに暮らしている。

彼女が今、幸せかどうか?は、聞く事も無いだろう。
死への恐怖、飢餓、腐臭にまみれた過去から比べれば
どんな暮らしもマシだろうから。

父親は収容所で看守に殴り殺されたというが
生き延びた母親と彼女は再会出来る。
二人の間で、ホロコーストの話は
”聞かれなければ話さない”がルールだったと云う。
彼女が夜中に魘(うな)されて飛び起きた時
彼女の夫は、気持ちが落ち着く朝まで
一緒に寄り添ってやるのだと云う。

此んな優しい夫も人間なら
ヒットラーという狂人に唆(そそのか)された
あの時代のドイツ国民も人間。
そんな、当たり前の事実を此のドキュメンタリーは
伝えている。

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