弾丸を噛め(1975)

先日、夜中にやっていた此れは

「冷血」「エルマー・ガントリー」「乾いた太陽」

「プロフェッショナル」「ミスター・グッドバーを探して」

の名匠リチャード・ブルックス晩年の作品。

その頃，男盛りだったジーン・ハックマンと

ジェームス・コバーンの２大スターが競演している。

話は今世紀初頭の西部開拓時代、新聞社が主催する

大陸横断、馬の耐久レースに参加する男達のドラマ。

自動車が出始め、そろそろカウボーイ達も食い詰め

それぞれ、賞金の一攫千金を狙っている。

主役のジーン・ハックマンは無骨ながら馬を愛し

若い参加者が馬を大事にしない事に腹を立てている。

洒落者のジェームス・コバーンとは古い馴染みの間柄。

それに英国貴族の参加者の馬はサラブレット。

メキシコ人は乗馬のベテランだが虫歯。

それに老カウボーイが病を押して参加。
此れを演じるベン・ジョンソンが渋くて泣かせる。

たった一人の女性参加は元娼婦という設定で

キャンデス・バーゲンが花をそえている。

題名の” 弾丸を噛め”は映画の途中で

ジーン・ハックマンとキャンディス・バーゲンが

虫歯のメキシコ人に弾丸で入れ歯を作ってやる処から

来ているが、本当の意味は戦場の手術で
麻酔がかけられない患者の歯の間に
弾丸をくわえさせ、痛みを我慢させた事に由来するらしい。

まあ、その我慢の距離は、東京〜北海道・旭川くらい

アメリカ大陸横断は地形も山あり谷あり

砂漠ありと寒暖の差が激しいから

それは、まさに地獄の耐久レースとなる訳だ。

途中には突然襲いかかる熊に、ガラガラ蛇を用意し

映画は手に汗握るサスペンスとなる。

様々なハンディを主人公ジーン・ハックマンに負わせ

スタート最後尾だった彼は、果たして
優勝出来るか？が、映画の見所。

そして元娼婦の参加者の真の目的が別な処に有った

と云う意外な展開をみせる。
悪者に競争馬を奪われ競技は一時中断となるが

そこで、ジェームス・コバーンが、何故かサイド・カーに

乗り換え、悪者を追いつめると云う仕掛けが出て来るが

此れはジェームス・コバーンがセルジオ・レオーネの
名作「夕陽のギャングたち」(1971)から繋がっているのを
西部劇マニアなら気が付くだろう。

それはともかく西部を走る蒸気機関車と並走する馬から

塩が吹き出る程のレースはダイナミックで

西部劇ファンならずとも嬉しくなる筈だ。