その後の仁義なき戦い
「仁義なき戦い・完結編」でも書いた様に
此のシリーズは続いていた。
東映と云う会社がドル箱の企画を止められなかったのである。
広島、九州、大阪、神戸と、しまいには沖縄まで
現代ヤクザつまり暴力団のエピソードを追って
ドラマになりそうな実在の人物を捜し、その抗争を
脚本家がフィクションとして構成した。
例えば此の「北陸代理戦争」は”北陸の帝王”こと
川内弘という男を取材し、福井・金沢の縄張り争いを
大阪・京都の大組織が利用し、奪い取ろうとする話だ。
此の作品が成功したのは
”北陸”という独特な風景を監督・深作欣二が
映像化した処に有る。
最初から最後まで白い、いや泥で汚れた
雪国の中で繰り広げられる、血みどろの戦いだ。
それは吹雪の中で乱舞するタイトルの能登の鬼太鼓の様に
凍った空気を引き裂き、燃え盛る炎が如く熱い。
白黒の世界に飛び散る紅い血が恐ろしく刺激的だ。
兄弟姉妹が上昇志向の為に骨肉の争いを拡げる。
野川由美子、高橋洋子が、それぞれ体当たりの演技を競う。
それは、今までの男だけの”仁義なき戦い”とは
違う面白さがある。
主役を演じた松方弘樹は絶えず身体を前後にゆすり
それが寒さからなのか?燃えたぎる血を押さえる為か?
絶妙な名演技だ。
松方弘樹は此のシリーズで実に生き生きしている。
高田宏治著「最後の真実」に依れば
監督にノセられて様々な工夫をし
瞬間的にアドリブを連発していたらしい。
彼の役者生命を此処で使い果たした様に
彼らしさを引き出せる監督が今の時代に居ないのが惜しい。
他のキャスティングでは
冒頭いきなり首まで雪に埋められリンチされる
元・水戸黄門様の西村晃が、地方のヤクザのズル賢さを見せ
同じくハナ肇が「馬鹿まるだし」に演じて笑える。
”星屑たちの記憶”でも出した
悪役・遠藤太津朗の老獪な関西ヤクザは流石の貫禄。
あの千葉真一がチョイ役ながら遊んで演じているのは
深作と千葉の信頼関係か?
此の作品、私としては”仁義なき戦い”系列として
かなりのレベルの完成度だと思うが
興行的には何故かヒットしなかった。
それで深作の”実録物”は此の作品で終わっている。
公開後、モデルとなった川内弘が射殺されたという現実は
映画には描かれなかったが、ラスト・シーンが
それを予感させて興味深い。
それにしても北陸だけに何度も何度も
登場するカニを食べる場面に
私は涎が出てしまった。
嗚呼カニ食いに金沢に行きた〜い!
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