2013年5月31日金曜日

黙秘
此の邦題は適切では無い。
そうかと云って”ドロレス・クレイボーン”という主人公の名前
そのままのタイトルも解りにくいだろう。
あのスティ−ブン・キング原作の映画化だ。
先に「ミザリー」でアカデミー主演女優賞を獲得したキャシー・ベイツが
再び物語の主人公を演じている。
それにしても暗いストーリーで
私は録画して夜に観たからイイにしても、昼の時間帯に
こんな映画を見る人が居るんだろうか?と思ってしまう。
でも脚本が良く、演じている俳優が皆、素晴らしいので
最後までぐいぐい引き込まれた。
まずキャシー・ベイツだが、その個性的な風貌は
「ミザリー」ではサディスティックな部分で生かされたが
此の映画では裏をかいて耐える表情が素晴らしい。
物語をネタがバレ無い程度に話すが
プロローグはメイン州の小島で家政婦をしていた彼女が
20年以上使えていた女主人を殺したかに思える場面から始まる。
その事件に呼ばれた彼女の娘はN.Y.のジャーナリスト。
どうやら母親とは父親の死を巡って確執が有るらしい。
此の娘を演じるのがジェニファー・ジェイソン・リー
(TVシリーズ「コンバット」の俳優ビック・モローの娘)
その父親の死は事故死となっているが、実は
アル中で暴力をふるう夫を妻つまり母親が殺害したのでは無いか?と
彼女は思っているのだ。
その事件を担当した刑事が又、今度の事件も扱い
キャシー・ベイツを犯人として追いつめる。
此の刑事を演じるのが歳を重ねて渋さと巧さを出して来た
クリストファー・プラマー。
その憎々しさは”レ・ミセラブル”のジャベール警部の様。
此の2人の名優を相手に堂々たる演技を見せる娘役
ジェニファー・ジェイソン・リーが良い。
映画は過去と現在を激しくカット・バックさせながら進行するが
画面のトーンを過去は鮮やかに、現在を青いモノトーンで
撮っているので意外に解りやすい。
そして、それは余りにも悲惨で意識の外に自ら消してしまった過去
娘の記憶を呼び醒す事で効果的に使われる。
その事件の有った日は皆既日食
この海に囲まれた小島の日食を鮮やかに美しく捉えた映像が見事!
カメラマンはガブリエル・ベリスタイン。
余り聞かないが此の”日食”の映像だけで彼の名前を覚えておこう。
そう、この日食の日に総ての事が起り、
それぞれの運命が変わったのだ・・・と云わんばかりの
演出が成功している。
監督はテイラー・ハックフォード。
「愛と青春の旅立ち」でデビューした人だ。
最近ではレイ・チャールスを描いた「Ray/レイ」の出来が良かった。
良かったと云えば
冒頭に殺された女主人役を演じたジュディ・パーフィット。
この英国の名女優が凄い。
メイクもあるが30年位の老い方を見事に演じ
キャシー・ベイツとの雇い主、使用人の関係を越えた
女の友情が此の映画の鍵と成っている。
そんなワケで悲惨な物語なのだが、映画を見終わった後
どこか心が穏やかになり明るくなる。
長い日食の闇が過ぎた様な気分に浸れる。
それがスティーブン・キングや監督の意図したところだろう。
私が配給会社の担当なら此の映画を
「皆既日食」と名付けるが、更に解りにくいか?

1 件のコメント:

  1. <追記>
    此の映画のキャシー・ベイツは痩せては居ないが
    30代から50代までの歳の幅を演じられるほど若い。
    今の彼女は、最近までBSの「ハリーズ・ロー法律事務所」に
    主演していて、相撲のKONISHIKIくらいに太り、歩くのも億劫そう。
    でも流石に芝居は巧くて毎回、ウ〜ンと唸るくらい面白い。
    あの体形では余り長生きは出来なさそうだから、真剣に痩せるか、
    もっと、どんどん映画に出て欲しいものだ。

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