「夕陽の挽歌」ブレイク・エドワース作品
此の映画は1971年に公開されている。
その前の1969年にアメリカン・ニューシネマの代表作
「明日に向かって撃て」と「ワイルドバンチ」が作られており
既に「ティファニーで朝食を」や「ピンク・パンサー」で成功していた監督
ブレイク・エドワースも刺激され西部劇を撮りたくなったと思われる。
アメリカン・ニューシネマの概要はアンチ・ヒーローとハッピーエンドではないラスト。
此の作品も概ね、その通りの脚本は監督ブレイク・エドワースのオリジナル。
随所に”新しいアメリカ西部劇”を意識した展開。
いわゆる”バディ・ムービー”と呼ばれる男の友情が主題。
此処では年の離れた男2人が主人公。
初老のカウボーイは"ワイルドバンチ"のウイリアム・ホールデン。
若いカウボーイは"ある愛の詩"のライアン・オニール。
しかしブレイク・エドワースの演出は
冒頭から中々、主人公にたどり着かない。
彼らが働く牧場の家族やら牧童たちの日常を丁寧に追い、
その牧童の1人が馬に蹴られて死んでから、やっと物語は動く。
そう此の映画あの「西部開拓史」と同じように
序曲と間奏曲がある大作だが、その割には、ごく地味な内容。
仲間の牧童の死に人生の儚さを悟った若者が、初老の仲間に銀行強盗を持ちかけ
それが、まんまと成功したものの、
彼らが雇われていた牧場主の息子たちに執拗に追われる。
その展開はコメディのように間抜けというか、
強盗であるのに主人公2人が、やけに人間臭い。
逃亡途中に若いライアンが子犬を連れ出したり
野生馬を調教するのに雪の中でホールデンがムキになったりする
物語にまるで関係ない場面が凄く面白いのだ。
それと音楽が作曲家ジュリー・ゴールドスミスなのに
感情移入は要らないとウィリアム・ホールデンの下手な歌が何度も出てくる。
(それが邦題の”挽歌”ということ?)
カメラはアメリカ西部3州にまたがる砂漠と雪山をダイナミックに捉えるスケール。
どこかウマの合う2人の逃亡劇は道行きの様に切なく哀しい。
今なら凄腕のプロデューサーが口を出し、
此の映画は多分、半分の長さになってしまっただろう。
先の主人公2人の追っ手の兄弟にジョー・ドン・ベイカーと
トム・スリケットのコンビもユニークで最後まで面白い。
とにかく全てが意表をついた監督の演出はマニアならでは楽しみ方というところ。