2025年8月9日土曜日

「最前線物語」(1980):サミュエル・フラー監督作品
ジャン=リュック・ゴダールの「気狂いピエロ」に出演して
”映画は戦場である!”と言い切った彼の傑作である。
彼はヌーベルヴァーグの若い監督たちのカリスマ的存在。
冒頭から確かにシャープな映像が、それまでの戦争映画とは違う
何かを感じさせる。
話は第一次世界大戦から始まり、それに参戦した米軍一兵卒
リー・マーヴィンが終戦しているのに気付かず
敵の兵隊を殺すシーンから始まる(此処まではモノクロだ)
そして映像はカラーになり
今度は第二次世界大戦に軍曹として参戦している主人公が
北アフリカでフランス軍と戦う。
あれフランスは連合国だったのでは?
此の頃フランスはドイツの占領されたビシー政権でドイツ側だったのだ。
その敵味方の曖昧な状況が此の映画のテーマを浮かび上がらせる。
そして部隊はシシリー島へ転戦。
ムッソリーニ政権でイタリアの此の島も敵だらけなのだ。
母親を殺された少年に埋葬と棺桶を約束して
それを実行すした舞台は女ばかりのその地で歓迎を受ける。
その間にリー・マーヴィンに配属された若い兵士たちを紹介していく。
「STAR-WARS」ルーク事マーク・ハミルや
「11人のカウボーイ」のロバート・キャラダイン等が
小説家志望とか夢を語る。
”それ俺が書いた本だよ”と言う兵士に”私がこれを刷ったんです!”と
答える新兵。
そのやり取りを傍で聞く軍曹リー・マーヴィンの表情が綻ぶ。
リー・マーヴィンと言えば「北国の帝王」「ポイントブランク」と
鬼の様な形相が似合う俳優、
その彼から此の様な優しい表情を引き出す演出の巧さ。
彼らはフランスへと目まぐるしく移動し
その彼らが次のルマンジー上陸作戦に参加させられ
激戦地オマハビーチで作戦とは言え、鬼と化した軍曹リー・マーヴィンの命ずるまま
捨て石の様に次々と殺されて行く様は
私は前夜「映像の世紀スペシャル・ヨーロッパ2077日の地獄」を観ていたので
尚更、心に響いた。
上陸後もドイツ兵を追ってベルリンへと向かう部隊に
妊婦が助けを求めてきて、その出産を戦車の中で助けるエピソード等
生と死、矛盾した人間心理を描く監督サミュエル・フラーのシナリオが巧みだ。
しかし此の戦争に実際に従軍していた此の監督はポーランド系ユダヤ人
最後のチェコスロバキアでの強制収容所のエピソードは
彼は冷静に演出出来なかったと見えて、それまでの映像とリズムが狂っている。
そう人間の仕業とは思えないナチスの狂気と
それらへの彼の憎悪はフィクションはドキュメンタリーには敵わない
悲惨な現実がドラマでは描き得ないのだ。
映画は”振り出し”に戻るように、
リー・マヴィンが戦争が終わっているのを気付かず
敵を刺すが部下達とその敵を救助する事で終わる。
戦争映画は「西部戦線異常なし」に始まり
「地獄の黙示録」「フルメタルジャケット」「プラトーン」と
大作が有り、メインストリームから外れたサミュエル・フラーの作風からして
B級映画と呼ばれようが、私は此の作品を一番に押す。

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