「悪名」(1961):田中徳三監督作品
私の”勝新コレクション”に欠けていた此の悪名シリーズを
どうやらBSで、やってくれるらしい。
1974年の「悪名賭場荒らし」まで計16本
コンビは解消されたが・・・。
その第1作目が此れだ。
まだ勝新太郎が長谷川一夫のメイクまで真似して白塗り二枚目だった頃で
座頭市の”汚れ”の印象が全く無く、彼のどんぐり目(まなこ)のまつ毛が長い。
そう此の作品はダークヒーロー”不知火検校”の始まる前、座頭市以前なのだ。
その粋な男っぷりは
長唄 三味線方の杵屋勝東治の次男坊名取2代目 杵屋勝丸として
深川の芸者衆に稽古を付けていた頃自然に身に付いたもの。
田宮二郎”モートルの貞”でなくとも
「子分にしとくれなはれ」と憧れてしまうだろう。
原作の今東光の生んだキャラクター朝吉は”男が惚れる良い男”
もちろん女たちも彼を放って置けない。
人妻(中田康子)女郎(水谷良重)にカフェの女給(中村玉緒)と夢中にさせる。
まあ玉緒は、その後役と同じに女房に収まったが・・・
足抜きがバレて因島まで売られた水谷良重を助けに行った朝吉だが、
先の女郎屋にはシルクハットの親分や女親分イト(浪花千栄子)が居て
1週間で戻るなら水谷良重を渡すと約束させられる。
しかし朝吉は彼女を東京へ逃す。
そして約束通り、一人で因島へ戻り女親分イトの制裁を受ける。
此の場面は此の映画を観た50年近く前の記憶そのまま
浪花千栄子の女親分に、ステッキで半殺しになるまで殴られ
血だらけになっても、ひたすら堪える勝新太郎に
浪花千栄子の女親分が
"アンタ、イイ男になるで名を残すで"と
(此の浪花千栄子の演技の凄さと言ったら・・・)
虫の息で浜辺に横たわる朝吉は
"名なんてどうでも良いわ、ワイのは悪名や"
監督・田中徳三の作った日本映画の名場面の1つだろう。
そして此の頃の日本映画には名優が居た。
山茶花究、須賀不二男、永田靖、伊達三郎:::。
それぞれの存在感は正にほんもの。
そしてカメラは名手・宮川一夫に、音楽は鏑木創。
胡弓と三味線を織り交ぜた音色は昭和初期の匂い。。
東映の任侠路線とは又違う男の世界が其処にはあった。
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