2025年1月24日金曜日

「クイズショウ」(1994) :ロバート・レッドフォード監督作品
今、TVは中居正広の芸能界引退ニュースで持ちきりだが
これも1950年代に実際に実在したTVクイズ番組”21”の不正事件を描いた映画である。
自分は出演せず監督のみの「普通の人々」で
オスカー監督&作品賞に輝いた彼の次の作品はハリウッド俳優の道楽では無い、本物の社会派ドラマとなった。
先ず、実際の事件に関わった当人が書いた原作をスリリングに脚本化したポール・アナタシオを褒めねばなるまい。
そしてキャスティングされた俳優たちの演技も。
オスカーにノミネートされた主演ジョン・タトゥーロは「バートンフィンク」等コーエン兄弟映画常連の実力派
そのクイズ番組で敵となるレイフ・ハインズも
王室演劇学校のシェークスピア役者で「イングリッシュ・ペーシェント」の主役。
その番組に疑いを持った捜査官役のロブ・モローが若々しくて良い。
俳優上がりの監督レッドフォード、
彼らの演技の引き出し方が流石に巧い。
そして1950年代の空気を伝える本物らしい映像、つまりカメラマンが良い!ドイツ出身のミヒャエル・バルハウス!
此の後、「バカーヴァンスの伝説」でもレッドフォードと組んだが
とにかくどの場面も美しく緊張感があり見事な構成力!
物語はクイズの解答者が貧民層出身では視聴率は上がらないと
スポンサーはもっと好感度のある者にさせたら?とTV局側の目論みに
誘われた大学講師が、先の貧民層と入れ替わって勝ち進む。
彼にとってはピュリッアー受賞の父親のコンプレックスか自分が有名に成る快感に酔えたのだ。
しかし先の保証を餌にワザと間違った解答をした貧民層の男がクイズショウはインチキだと訴えを起こす。
若い捜査官は、それをもみ消したテレビ局全体の不正を問う。
此れは今のフジテレビ問題と重なる。
捜査官の鋭い追及に、インテリ代表の様な大学講師もクイズの答えを先に教えられるというインチキに耐えられず、ワザと間違った答えをして番組を降りる。
実は捜査官と大学講師もハーバード大学出身のエリート。
二人の間にいつしか友情の様なものが芽生え、最終弁論に彼を呼ばない約束をする。しかし大学講師は自ら真実を発言する道を選ぶ。
そこにはアメリカ社会の階級制度やユダヤ人差別の問題も浮かび上がり、
果たして裁判の結果は如何に?
さらに大学講師の父親は社会的に地位のある名士、家名に傷がつく息子の不祥事にどう対処するのか?
演じるのが「わが命尽きるとも」の名優ポール・スコフィード。
こんな贅沢なキャスティングに余裕すら感じさせる
レッドフォード演出の凄さ。

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