2025年1月16日木曜日

眠狂四郎殺法帖:田中徳三監督作品
市川雷蔵は不思議な俳優である。
さして美男でも無いのに
カメラに映ると独特な色気が漂よう。
ライバル勝新太郎は敵わないと悟って汚れの"座頭市"に方向転換した。
雷蔵の人気を不動のものにしたのが此の眠狂四郎。
転び伴天連つまりポルトガル宣教師が破戒して産まれた子だから、
髪の色は茶色で碧眼という設定に
流石に雷蔵は青いコンタクトレンズまでは入れなかったが。
それでも自らは誘う事はないが誘われたら拒まずの狂四郎の"性"は、
勝新の豪放磊落と正反対の雷蔵らしからぬキャラで、
怪しげなムードが画面に溢れる。
しかし、もっと怪しいのが剣に対するフェチ加減。
円月殺法なるものも科学的でも戦略でも無い。
ひたすら剣の美しさを鼓舞する様。
シリーズ第1作の此の作品では彼は滝の前で頬を剣に当て恍惚となっている。
これは財津一郎が剣を舐めてしまうギャグに繋がるが
雷蔵がやると全く違う耽美的な世界になる。
剣は人の命をやり取りする道具だが、そこには道具を超えた武士道や
葉隠に繋がる精神的な何かがあるのだ。
三島由紀夫原作の映画「剣」でも彼はその"危なさ"'あやうさ"を追求していた。
市川雷蔵、夭折したからこそ似合う世界なのかも知れない。


 

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