2024年3月29日金曜日

「山河あり」(1962):松山善三監督作品
今年が女優・高峰秀子の生誕100年に当たるらしく
BS松竹東急が彼女の出演作を特集をしている。
此れは彼女が夫の松山善三と組んで撮った
「名もなく貧しく美しく」の次の作品。
太平洋戦争前後のハワイ移民たちの苦難の歴史を描いている。
冒頭ハワイの砂糖きび畑で灼熱の太陽の下
奴隷の様に働かされる主人公達の場面に
その現場でCMを撮ったのを懐かしく思い出された。
そういえば、その頃泊まっていたホテルの女主人が
ロビーで当時のサトウキビ畑の労働者たちの写真集を見せてくれた。
とにかくに日系移民達の大変な苦労の後に今のハワイが有ることを知らされた。
主人公の二家族を中心に物語は展開する。
先の見えない砂糖きび労働から、彼らはそれぞれクリーニング店と食品店を開いて、
子も二人ずつ生まれ、それなりに生活できる様になる。
その途端、真珠湾攻撃で敵国日系移民は迫害され、
それ以前に夫の遺骨を息子と共に日本の故郷に持ち帰った高峰秀子は
ハワイに戻れなくなり、更に息子は憲兵に連れ去られ、
酷い拷問を受け、死にかけて戻される。
彼はハワイが恋しいと弱った身体でウクレレを弾き
それにフラダンスを踊って見せ息子を励ます高峰秀子が切ない。
結局、玉音放送の2日前に息子は亡くなり
その後、もう一人の息子もヨーロッパ戦線で亡くなったのを知らされる。
音楽は木下忠司。
彼の得意な美しいメロディーがスティールギターで全編を覆い、
モノクロ映画ながらハワイの風土の空気感を匂わせる。
映画の題名「山河あり」は杜甫の漢詩"国破れて山河あり”から
二人の息子を戦争で失い、それでも生きて行かなければいけない
彼女の心情を脚本監督の松山善三は伝えたかったのか?
高峰秀子という女優は日本映画で、
どれだけ悲しいヒロインを演じた事だろう。
成瀬巳喜男の「浮雲」「女が階段を上がる時」
木下惠介の「二十四の瞳」「喜びも悲しみも幾年月」
何もが、素晴らしい作品となっている。

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