2022年3月18日金曜日

長江哀歌(2006):監督ジャ・ジャンクー

三峡ダムに水没する古都を解体する作業をしている人々を背景に

過去を取り戻そうとする男と、過去を清算しようとしている女の

2つのドラマが同時進行で描かれる。

長江という大河を挟んで丸で空爆にでも遭った様な

破壊中の建物群のスペクタクルな迫力には圧倒されるが

それとは対照的に男も女も寡黙で、内に秘めた想いは口に出さず

映画としての流れは此れを輸入した会社TAPの社長の北野武の作風。

小津安二郎映画の様に静かで、ギリシャ映画の

テオ・アンゲロプロスの様にゆったりしている。

それでも物語に引き込まれるのは、

勿論エキストラの労働者たちに混じった主役ふたりの存在感

素人を使っているのでは無いかと思うほどリアル。

16年前に家を出て行った女房と娘にも

3年も連絡をよこさない夫にも

此の映画、直ぐは合わせない。

観客はイライラしながら主人公たちと同じように

どんよりとした雲と重い長江を見つめるしか無い。

此の監督の作風が変わっているなと思うのは

そのリアリズムが突然、巨大な建物がロケットの様に

噴射して宇宙へ飛んで行く場面や、脇の人々が何の解説明も無しに

京劇のメイクになったりする遊びが入る、そんなリズムが

此の映画のアクセントになって、最後まで見入ってしまう。

そして残るのは人間の切なさ哀れさの余韻

ヴェネチア映画祭で金獅子賞を得たのも宜なるかな・・・。

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