2018年8月27日月曜日

冷たい雨に撃て、約束の銃弾を (2009)
フランスの国民的アイドル、ジョニー・ハリデーの遺作である。
彼は此の歳に大腸癌と診断され手術している。
おそらく、その前後に撮られた作品と思う。
監督は香港ノワールの第2世代ジョニー・トー。
そのクールながら激しいアクション・トーンは踏襲されている。
安易なセンスの無い題名は日本の配給会社が
勝手につけたもので、本当は Vengeance=復讐である。
話は、フランスからマカオに嫁いだ娘の家族が皆殺しにされ
その犯人を追う父親役がジョニー・ハリデーという設定。
嘗てのアイドルだった彼のハンサムな面影は見事に消え
レストランのオーナー・シェフと名乗っているものの
拳銃の扱い方がプロで、深く刻まれた顔のシワが
実は裏社会に生きてきた男である事に、生かされている。
物語は娘の復讐に、彼が雇った香港側の殺し屋3人組の
義理と人情の男の世界、東映ヤクザ映画なのである。
仇を討つ相手が結局、彼らのボスだったというのに
フランス男の”父の想い”に共鳴した彼らが
男の約束と命をかけて最後まで戦うわけである。
こう書いてしまうと話が簡単すぎるが
此の監督ジョニー・トー、シナリオをだいぶ捻って
主人公ジョニー・ハリデーが殺し屋時代、脳に弾を受け
記憶が、消えてゆくというスリリングな展開を用意していた。
だから復讐する相手の顔も名前も判らなくなっていくのを
助っ人3人の殺し屋が、どう受け止めるかがミソ。
まるで間抜けな話となる筈だが、此の映画は
様々な仕掛けを用意してグイグイ観せるのである。
ともあれ全部話すと”ネタバレ”になるから辞めておくが
ジョニーの遺作に相応わしいエンディングとでも言っておこうか。
我が青春のシルヴィー・バルタンにジョニー・ハリデー
”アイドルを探せ”に”甘い暴力”が記憶の中で響く。

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