「ブッチ・キャシディ」(2011)日本未公開
アメリカン・ニュー・シネマの傑作「明日に向かって撃て」で
主人公ブッチとサンダース・キッドは二人とも死んだはずだが
此の作品は、その片割れブッチ・キャシディが生き残り
ブラックホーンと名前を変えて
ボリビアで静かに余生を送っていたという設定。
原題”BLACKHORN"は、そこから来て居る。
冒頭、髭と余りの老け具合に主役のサム・シェパードが
判らなくて、どこかで見た俳優だな・・・と。
全編を通して映像のトーン、演出が素晴らしく
調べたら「海を飛ぶ夢」のスペイン監督マテオ・ヒル
「アレキサンドリア」等のスペクタクルもとっている。
ブッチ・キャシディも歳をとり、望郷の念が強くなり
母国アメリカへ戻るべく金を用意するが
その旅の途中に絡んできた若いスペイン男のせいで
馬と金を全部手放してしまう。
その男は鉱山の技術者だが鉱山のオーナーから
大金をくすね、追われているという。
最初はブッチも、此の迷惑な此の男を邪魔にするが
行動を共にする内、何処か昔の自分に似た
此の男に親近感を抱き、彼の追手をまくのに協力する。
そういえば「明日に・・・」もひたすら追手から逃げる映画だった。
監督マテオ・ヒルは、昔のブッチとサンダースそして恋人のエッタと
若い頃の彼らを登場させ、前作へ最大のオマージュを捧げて居る。
そして、その逃亡と追跡のロケーションに
ボリビアの真っ白なスペクタクル大地・ウユニ塩湖を選び
そこで追いつ追われつのサスペンスを演出した。
若くギラギラしたスペイン俳優エドアルド・ノリエガに
老練なサム・シェパードの演技対決は流石に見応えがある。
その逃亡は成功したかに見えたが
結局、サム・シェパードは自分が彼の逃亡に
利用された事、つまり裏切られた事に気づき
彼を追い、東映ヤクザ映画の様な
”おとしまえ”をつける。
此れに絡んで、前作「明日に・・・」でも執拗に
彼らをボリビアまで追ってきたマッキンリーという賞金稼ぎ。
その役を「クライング・ゲーム」の名優スティーブン・レイ。
此のニヒルなキャラクターが作品を更に面白くさせ
”人生の最期に何が大事か?”を観客に問う。
そう脚本家でも有るマテオ・ヒルは
ジョージ・ロイ・ヒルの名作西部劇に題材を借り
彼なりの哲学をエンタテイメントとして作品にした。
此の映画はサム・ペキンパーの「砂漠の流れ者」に通じる
近代に取り残された”カウボーイの挽歌”が切なく流れ
先日亡くなった名優サム・シェパードの遺作ではないが
まるで、それの様に感じてしまうのだ。
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