「スローターハウス5」(1972)
此の作品はアメリカン・ニューシネマの代表作とされる
「明日に向かって撃て」の3年後に作られている
不思議な映画である。
カート・ヴォネガットのSF小説の映画化で
SFといってもブレードランナーの様な未来を
描いている訳ではなく、主人公が何故か突然
時間の枠から外れ、過去と未来を行ったり来たり
コントロールが出来ないタイムマシンに乗せられた状態。
第二次世界大戦さなかの欧州戦線にワープしては
ドレスデン空襲を体験をしたりする。
あまりにも悲惨な歴史の裏に隠れた出来事ながら
当時ドレスデンには少年兵ばかり、空爆の後にも
主人公には、耐え難い出来事が続く。
かと思えば、帰還した米国の自分の晩年に進み。
ある日、宇宙のトラルファマドール星から
かぐや姫ならぬ光の迎えが来て、愛犬共々拉致され
そこで憧れのグラマー女と子までもうけることになる。
とにかく全編、目紛(まぐる)しく時代と場所が変わり
そこで主人公は、ただ其れを受け入れる事しかできない
”死とはそういうものだ”と悟るのだ。
題名の”スローターハウス”とはドイツ語で
”屠殺場”の意味で、此の話を象徴している。
題名の”スローターハウス”とはドイツ語で
”屠殺場”の意味で、此の話を象徴している。
主人公の妻が夫の航空機事故の知らせに
気が動転し滅茶苦茶な車の運転で死んでしまう下りは
ジョン・アーヴィング原作の映画化「ガープの世界」で
彼の妻が車の中で浮気をしている最中に
車に追突され、浮気相手の男のナニを
喰いちぎってしまう等の、可笑しくて悲惨な話を
”それが人生さ”とジョージ・ロイ・ヒルは繋げている。
そういえば「明日に向かって撃て」も、西部開拓の
新しい時代の波に乗り遅れたアウトロー・コンビが
追い込まれて、無様に死んでいくのを
ジョージ・ロイ・ヒルはユーモアを交えて描いていた。
”面白うて、やがて哀しき人生”を描くことを得意とした
此の監督は、晩年パーキンソン病を患い
早めに業界から離れてしまったから
ヒット映画を連発し売れっ子監督だった割には寡作。
しかし何れの作品も此の映画に全編流れる
グレン・グールドのゴルドベルグ変奏曲の様に
人の心に深くしみるものばかり。
グレン・グールドのゴルドベルグ変奏曲の様に
人の心に深くしみるものばかり。



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