2017年6月24日土曜日

ザ・ウォーク(20015)
私が苦手なものが二つあり
一つはクモやゴキブリ等の昆虫類
まず一つ目の昆虫、それもカマキリの巨大な奴が
或る惑星にウジャウジャ居て、人間を襲ってくる
ポール・バーホーベン監督のSF「スターシップ・トゥルーパーズ」
そんなものとは、つゆ知らず
入ってしまったL.A.の映画館で私はギャーッと叫び声をあげた。
二つ目は高い所、つまり高度恐怖症なのだ。
その恐ろしい映画を昨夜、我が家で観て
真夜中なのにギャーッ!と大声をあげてしまった。
もう目が眩み、恐怖で尻の穴は窄(すぼ)み
録画したヴィデオだが何度観るのを止めようとしたことか。

この映画の主人公は小さい頃から綱渡りが大好きで
1974年に建設されたばかりの世界貿易センターに一目惚れ
その2棟の屋上に綱を張り渡ろうとする冒険というか
滅茶苦茶な話である。

まあ並の人間なら考えもしない発想だが
実際に在ったトルー・ストーリーの映画化だという。
まず監督ロバート・ゼメキスはSFXを使いこなす名人。
「フォレスト・ガンプ」で死んだはずのJ・F・ケネディやジョン・レノンを
完璧な合成でトム・ハンクスと共演させているし
「ロジャー・ラビット」ではアニメ・キャラと実写を違和感なく
共演させている。
この作品では、9.11同時多発テロで破壊され
今は在りえないはずの世界貿易センターを完璧に蘇らせ
しかも、あらゆるカメラ・アングルで主人公の冒険を捉えているのだ。
現実なら恐怖で絶対正視出来ない情景が
バーチャルとして観れるという誘惑に負け
つまり怖いもの見たさで
ついつい最後まで観てしまった。
それは此の映画、怖いだけでなく
主人公の信念や彼の途方もない計画に参加する友達たちの
人間ドラマがキッチリと描かれていたからである。
それを生き生きとさせているのはキャスティング。
フランス人という設定だが米国俳優ジョセフ・ゴードン=・レヴィット。
彼は練習たった8日で綱渡りをマスターしたと云うから驚きである。
オスカー俳優ベン・キングスレーがサーカス芸人の親方で
彼に綱渡りのコツを教えて映画に深みを出している。
その他にも米英の芸達者な俳優が登場し
とかく”綱の張り詰めた”作品の緊張感を緩める
ユーモアを見せている緩急自在の脚本が巧い。
でも何より圧倒的なのは地上110階の
スペクタクルな映像の驚異的なリアルさ!
その体験はディズニーランドやユニバーサル・スタジオの
出し物を遥かに超えて凄い。
此れは現実に在ったサクセス・ストーリィーだけではなく
光り輝く世界貿易センターを仕事で
ハドソン河から撮影したことのある私には
その2棟がフェードアウトして消えてゆくラスト・シーンに
この映画に監督ゼメキスが意図した本当の狙い
世界貿易センターへのオマージュ
”形あるもの、いつか壊れる”という
この世の儚(はかな)さ、諸行無常を深く感じた。

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