2015年7月16日木曜日

シャーロックホームズの冒険(1970)
此の映画は公開された当時、私は見逃し
その後、ヴィデオ化もされないまま
ビリー・ワイルダーの幻の名作として
長い間マニアに待ち望まれて居た作品である。
それがナント昨日、NHK BS-2でオンエアされた。
ビリー・ワイルダー作品と言えばジャック・レモンに
シャーリー・マクレーンのコンビの
「アパートの鍵貸します」以来、喜劇の職人監督として
ハリウッドのトップ監督だが
実は、その前にアガサ・クリスティ原作「検察側の証人」で
「情婦」というミステリーの傑作を撮っている。
その彼がコンビの脚本家I・H・L・ダイアモンドと
10年もかけて温めていたと言う企画が此の作品なのだ。
「シャーロック・・・」はコナン・ドイル原作だが
此のシナリオは主人公のキャラクターは借りているものの
全くのオリジナル。
英題名の"The Private Life of Sherlock Hoimes"の通り
彼の”個人的な生活”を描いている。
その個人的とは、彼が実は麻薬中毒者で
コカインを注射している場面が数回出て来る。

NHKはTVシリーズの「シャーロックの冒険」で
最初は麻薬を使う場面をカットした為、再編集された
最近のものは、吹き替えの露口茂が時々、別の声優に
変わっていた。
(写真左が監督ビリー・ワイルダー)
話を映画に戻すと当初、ビリー・ワイルダーは
此の作品を4時間近い大作として撮影していたらしい。
しかし配給にあたり、2時間に縮められ
それで4つ有ったエピソードが2つになったという。
そのエピソードの1つ
ロシアのバレリーナが高齢で引退し、子供を産むので
優秀な子種が欲しいとシャーロックを狙うが
シャーロックは難を逃れる為
私は相棒ワトソンとデキて居ると嘘をつく。
此の場面ワトソンがバレリーナに囲まれ
有頂天に成っていると徐々に、その"ケ"のある
男性バレリーナに代わられてしまうのが可笑しい。
此のワトソン役は当初のキャスティングでは
ピーター・セラーズで
シャーロック役はピーター・オトールが
演じる筈だったとか。
そうなっていたら又面白く成ったろう。
此の作品ではロバート・スティーブンス(写真右)という俳優が
シャーロックをやったが彼もエキセントリックな
二枚目で出来は悪くは無い。
彼は、あの英国の大女優マギー・スミスの息子だとか。
そのシャーロックの兄マイクロフトを演じたのが
先日93歳の長寿を全うした名優クリストファー・リー(写真左)
流石のドラキュラ眼力は弟シャーロックを超えている。

ロシアのバレリーナに続くエピソード2は又しても”女難”
彼の事務所にズブぬれで転がり込んで来た女は
記憶喪失、でもやたら色気が有る。
”シャーロックは女嫌い”という原作に
ビリー・ワイルダーは最初のエピソード1で伏線を作り
此の女の素性を探るうちに
英国を揺るがす大事件に巻き込まれるという設定。
女の夫が失踪、それを追跡して行くと
舞台はスコットランドのネス湖へ。
彼等3人の自転車での古城巡りが楽しい。
ネス湖と言えば・・・ネッシー。
霧の中から、それが登場した時は
エーッ昨日は”宇宙人”で、今日は”恐竜”かよ?と
興奮してしまった。
それにサーカスの小人達や、
すっぽりフードを冠った怪しい僧侶の集団と
オドロオドロした登場人物は
ビリー・ワイルダーのサービス精神満載。
サービスと言えば途中で
ロンドンの警官が、道路向こうから来るものに
怯えて建物に隠れるのだが
それは排水車の水がかかるのを恐れただけという
彼らしいギャグが何気なく入って居る。
此の作品は”シャーロックの女嫌い”を逆手に
実はヒロインとの儚い恋がメイン・テーマなのだ。
このヒロインを演じたジュヌビエーブ・パージュが美しく
シャーロックはワトソン共々、彼女に夢中に成って
夫を捜すべく奔走し、その挙げ句の哀しい結末が
此の作品を幻の名画にさせた所以だろう。
音楽は同じサスペンス映画「深夜の告白」(1944)で組んだ
大御所ミクロス・ローザ
70mmスペクタクル映画「バン・ハー」の
迫力ある音楽で有名だが、此れでは
シャーロックの得意なヴァイオリンの名器
悲恋を奏でて美しい。
それにしても長編になる筈だった此の映画
何処かに、その当初のシナリオだけでも残っていまいか?

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