ドライブ(2011)
此の映画は、公開時に劇場で観ていたが
先日TVで放映されたのを録画した。
改めて観て、此れがカンヌ映画祭で監督賞を得たのを納得。
設(しつら)えはアメリカン・アクション・ムービーだが
作品のテンポやムードが従来の其れらとは、だいぶ異なる。
どちらかと云えばフランスの監督ロベール・ブレッソン
英国のトニー・リチャードソンの初期のものに近い。
つまり饒舌の逆、やたらストイックなのだ。
監督ニコラス・ウィンディング・レフンは
その変わった名前の通りデンマーク人である。
育った環境が、映画作りに影響しているか?
主人公は車の修理工そして映画のスタントマンという職業は
表向き、実は裏で強盗の逃走を請け負うドライバーなのだ。
映画の題名「ドライブ」は、そこから来ている。
まず、此の主人公を演じるライアン・ゴズリングが
プロとして黙々と仕事をこなす姿がクール。
ジャン=ピエール・メルヴィルの名作「サムライ」の
虚無的な目のアラン・ドロンを彷彿させ、めっぽう格好良い。
映像はフランス・フィルム・ノワールの其れ
画面の色彩構成は、ブルーを基調に時々
鮮やかな赤をポイントにしてメリハリを付けている。
調べたら監督のニコラスは色彩障害で中間色に問題があるとか?
それで此の様な映像に成るのが興味深い。
編集のリズムも、大きく間を取り、まさにヌーベル・ヴァーグ。
かと思えば、アクション・シーンは一気に畳み込んで迫力を出す。
何処で彼は此の様な達者な映画技法を学んだのだろう。
そう云えば今や売れっ子の商業映画監督
スティーブン・ソーダバーグの初期の作品がそうだった。
此の作品の成功で、彼にハリウッドからオファーが
殺到しているだろうが、此のレベルを保って欲しいものだ。
付け加えれば総じてキャスティングが素晴らしい。
主人公が想いを寄せる人妻の、あどけない美しさ。
その彼女を護るため主人公が戦いを挑むギャング達は
フランス映画に出て来る様な渋い面構え。
よく此れだけ、味の在る俳優を集めたものだ。
あのカンヌが喝采を贈ったのも、宜(むべ)成るかな?
でも敢えて文句を付ければ、音楽が月並みで軽い。
「タクシードライバー」のバーナード・ハーマン
もしくは「サムライ」のフランソワ=ド・ルーベの
重厚さが欲しかった。
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