仁義なき戦い・完結編
私としては脚本家・笹原和夫の著書「昭和の劇」の通り
4作目の「仁義なき戦い・頂上作戦」で
此のシリーズは終わったと思っていたので
更に続いていたものには興味が無かったのだが
その笠原の後を継いだ脚本家・高田宏治が、実録もの全てを
解説した本「東映実録物の真実」を本屋に発見。
読み出したら、その後の”仁義なき”も無性に観たく成り
TSUTAYAへ行ったら、菅原文太が亡くなったばかりで
実録物が、そこそこ揃っていた。
まずシリーズ”完結篇”とした此の5作目を観てみた。
監督はシリーズ全部を演出している深作欣二だから
コッポラの「ゴッドファーザー」シリーズの様に
トーンも変わらず安心して観ていられる。
話は広島ヤクザ抗争の続き
主役の広能を演じる菅原文太は冒頭早めに刑務所に入り
政治結社に変身したヤクザの会長・武田を小林旭が演じ
昔のヒーローの面影は無いが流石に貫禄をみせる。
その側近に北大路欣也が初々しく座る。
私は”ドクターX"の彼を”大根”扱いにしたが
訂正、あれは役が合わなかったか演出ミス。
旭のムショ送りに、側近から会長に出世する彼は
切れ味鋭く中々良い。
”此れからのヤクザは、こうでなくては”と
組織の改革に乗り出す姿がハマっている。
確か彼は2作目で山中という主人公を演じて死んだ筈。
監督・深作の再度起用に答えた名演だ。
しかし、組織は海千山千の狡い奴ばかり
纏めきれず、更に闘争はエスカレートする。
何せ金子信雄、山城新伍、田中邦衛に宍戸錠と
アクの強い役者を揃えているから派閥系列も理解し易い。
それでも有り得ない仇同士が利益のみで
野合の様に兄弟の杯をかわすのは
まさに”仁義なき戦い”、新しく参加した脚本の高田が
狙った処だろう。
とにかくヤクザ達の台詞のやりとりが面白い。
「牛の糞にも段々が有るんやで
お前と俺が何で対等なんや?」等
下克上ながら”見栄”を気にする彼等が見えて来る。
シリーズ5作目、これだけ大勢の登場人物を裁きながら
それでも人間の弱さ、醜さが描き込まれた
脚本、演出には感服する。
菅原文太と小林旭がムショから出て
シャバの空気を吸った途端
再び縄張り争いを始めるかと思いきや
”ワシ等の時代は終わったんじゃ”と互いに
第一線から身を引くエンディングが巧い。
小林旭「今度、一緒に酒でも飲もうかい」
菅原文太「いや、それはでけん、ワシらの代わりに
死んだもんがおるけに」
現代ヤクザを演じたらピカイチだった
菅原文太に合掌。
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