2014年12月29日月曜日

砂漠の流れ者(1970)
此の映画は公開当時ヒットしなくて
後のサム・パキンパー人気で1991年にリバイバルされ
その時は「ケーブル・ホーグのバラード」の題名で上映された。
ハイ・スピードの暴力描写で有名な監督らしくない
叙情的な演出はアメリカン・ニューシネマの
傑作とするファンが多い。
原題の“The Ballad of Cable Hogue"通り
(バラード=ゆっくりしたテンポで感傷的な歌詞の歌を意味する)
ケーブル・ホーグという男の一生を歌っている。
米国西部で、時代に乗り遅れた砂金堀りが
狡賢い仲間に裏切られても毅然と生きて行く姿が
無精髭に砂まみれながら何とも清々しく美しい。
砂漠のド真ん中に身ぐるみ一枚で
放り出された彼は運良く水源を発見し、
其処を駅馬車の中継地点にして成功する。
彼の波瀾万丈な人生を
駅馬車の車輪がくるくる回るように淡々と描き
あの血塗(ちみどろ)な「ワイルド・バンチ」とは別の
ペキンパーの世界は”男の優しさ”に満ちている。
特にステラ・スティーブンス演じる
幸薄い娼婦との触れ合いは
砂漠で転がる枯れ草の如く、くっ付いては離れ
うたかたの恋として儚(はかな)さが観る者の胸を打つ。
此の元アイドル上がりの年増女優は
ペキンパーの抜擢に答え、女優としての”総て”を
此れで使い果たしたかの様な名演技だ。
ペキンパー映画常連の脇役
ストローサー・マーティンにL・Q・ジョーンズの
小悪党ぶりも人間臭く映画を楽しませる。
インチキ牧師役のデヴィッド・ワーナーは英国性格俳優
デビュー以来、渋い脇役として数々の名作に出演
その知的な存在感が映画に深みを与えている。
先日もTVの「ミス・マープル」に出ていた。
主役のジェイソン・ロバーツは遅咲きの名優で
様々な名画に重要な役で起用され
「大統領の陰謀」「ジュリア」で2度も
アカデミー助演賞を取っている。
特に「ジュリア」でのダシール・ハメット役が印象深い。
そして、此の映画のもう一つの魅力は
音楽のジュリー・ゴールドスミス。
「チャイナタウン」「パピオン」「グレムリン」と
アメリカ映画のあらゆるジャンルにスコアを書いている彼は
此の作品そのものの”バラード”を書いた。



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