2014年7月25日金曜日

マッド・MUD (2012)
映画好きの先輩お薦めの作品。
第65回カンヌ映画祭でパルムドール賞を争ったとか?
残念ながら、それは前年に続きミヒャエル・ハネケ監督作品に
持って行かれたが、此れも中々の出来である。
主人公は14歳の少年。
家族と共に、河に浮かべたボートハウスで暮らしている。
その少年が仲の良い友達と河の中州で
大きな樹の上に乗った小舟を見つける。
洪水で流され樹に取り残されたらしい。
そのビジュアルが何とも象徴的でインパクトがある。
少年たちが隠れ家にしようとした、その舟には先に先住者が居た。
その男が殺人をして、警察に追われている逃亡犯と云う事は
後で解るが求めるまま、男に食料を運ぶ。
男の呼び名がマッド=変人(映画のタイトルの由来)
此の男役に若手演技派マシュー・マコノヒー。
男が殺したのは、彼が愛していた娘を妊娠させ
捨てたからと云う話に少年達は素直に彼に同情し
河からメキシコ湾に逃げる為の舟の修理と部品を集める。
ところが、一緒に逃げようと誘った娘は逃げてしまう。
やっと探し出した娘に少年が問いつめると
彼は嘘つきだから嫌だと
此の娘役がリース・ウイザースプーン。
揺れ動く娘心を見事に演じて流石のアカデミー賞女優。
全てに不信感を持った少年が逃亡犯に真相を問いつめる。
自分の逃亡を手伝わせるため騙したのか?と。
此の少年役のタイ・シェリダンが巧い。
両親の不和と離婚の危機に心を痛める子供の感情や
思春期の少年らしい恋心の表現など
自然で陰のある彼の演技が此の映画の要だ。
監督ジェフ・ニコルズ自ら書いたシナリオが緻密で
上手に張った伏線がラストに向かって効いて来る。
そして逃亡犯を子供の頃から父親代わりに育てた
河の対岸のボートハウスに住む元軍人役に名優サム・シェパード。
さすがに老いたが魅力的な演技を見せる。
名優と云えば逃亡犯が殺した男の父親に、懐かしい悪役
ジョー・ドン・ベイカーが街を支配し逃亡犯を追いつめ
恐ろしい緊迫感を出している。
マーク・トゥエインの少年小説「トム・ソーヤーの冒険」から
インスパイアされたという此の映画
無垢で危うい少年時代の感情を丁寧に描いて
全体の構造はサペンスとアクションを盛り込んだ
申し分無い娯楽映画と成っている。
何よりラストがハッピーエンドなのが嬉しい。
此の監督の次回作が早く観たいものだ。

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