2017年6月16日金曜日

鶴田浩二(1924〜1987)
金子信雄が映画「総長賭博」のラストで
杯を与えたはずの鶴田浩二が、自分に斬り掛かってきた時
”お前の任侠道はどうなっているんだ?”と叫んでいるが
此の一言が、彼に効くと親分が思ったのは
彼が義理人情に生きている”古いタイプの人間”だから
俺には逆らえない筈だと・・。
ところが、極悪非道を繰り返す親分に
愛想をつかし鶴田は、こう答える。
”俺は只の人殺しだ!”と。

鶴田浩二が此の”古いタイプの人間”というキャラクターを
モノにしたのは、かなり晩年になってからである。

彼は若い頃、昭和20年代ブロマイド売り上げナンバー1
雑誌「明星」「平凡」の人気投票1位を守り続け
今で云う”キムタク”並みのアイドルだった。
松竹のスター高田浩吉から芸名を貰い、弟子として
大部屋からスタートしたが、その甘いマスクで
頭角を現し、瞬く間に師匠を追い越す程のスターと成った。
松竹の大ヒット作「君の名は」のヒロイン岸恵子と浮き名を流し。
また彼を襲撃して傷を負わせた地方のヤクザ山口組が
メジャーに成れたのも彼の人気が有っての事だったと云われる。

鳴り物入りで東宝に移籍してからも
映画「宮本武蔵」では脇役の佐々木小次郎なのに
あの三船敏郎よりも大スターとしてタイトルは先であった。
しかし既に人気のピークは過ぎており
「柳生武芸帳」「眠狂四郎」「日本誕生」と大作に出演するも
世界のクロサワ&三船コンビを超える
存在に彼は成り得なかったし
まして加山雄三の「若大将シリーズ」森繁の「駅前シリーズ」に
彼の出番は無くて、今度は東映に移籍する。

此の時、彼は”柳亭痴楽は良い男、鶴田浩二や錦之助”と
落語のマクラにされた美貌も既に衰え、貫禄のみが
彼のタイトル・ロールの場所を確保していただけであった。
しかし、その彼が人生の辛酸を舐めた渋い男へと
いつの間にか”化け”ていた。
東映が衰退したチャンバラ映画からの脱出を計った
ヤクザ映画路線「飛車角」「博徒」シリーズ
同じく中途半端な二枚目を演じていた高倉健と共演した
「日本侠客伝シリーズ」で彼の魅力が観客に再評価されたのである。
肉体美が舞う”動”の高倉に対して、思慮深い”静”の鶴田の風格。
此れで東映は鶴田&高倉の黄金の二枚看板と成り
明治大正昭和初期まで生きていた任侠の世界を延々と
後に実録物の「仁義なき戦い」が始まるまで続けたワケである。

話を”古いタイプの人間”に戻すが
彼の歌で”古い奴だとお思いでしょうが・・・”の
イントロで始まる歌「傷だらけの人生」は
今でもカラオケで相変わらずの人気だ。
NHKのBSアーカイブでは「男たちの旅路」を再放送
そして彼の遺作と成ったドラマ「シャツの店」では
”古い人間”で何故悪い!と腹の底から絞り出し
彼はチャラチャラした今の若者のモラルの欠如を嘆き
数少ない特攻隊の生き残りとして
”生きる”という事の大切さを訴えている。

でもね、彼の軍歌を流しても
今の若者には”何なの此れ?”と解らないのよ
知らないのよ”鶴田浩二”を。
だから、取り敢えず止めましょ!
大音量のスピーカーで彼の歌をかけて街中を走るのはネ。
日の丸つけて、黒い丈夫そうなバスに乗った皆さん。

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