2022年2月3日木曜日

池部良(1918〜2010)
此の俳優は戦前の風刺漫画家・池部鈞と
岡本一平の妹の間に生まれた。
だから、画家の岡本太郎は従兄にあたる。
映画監督を夢見て、東宝に入社したが、
戦時下で助監督の空きが無く
当時としては身長が 175cmと、スタイルが良かったので
俳優にさせられたと云う。
その風貌から知的な二枚目として巨匠監督たちの
文芸作品「青い山脈」「雪国」「暗夜行路」に起用される。
私事だが小学生の頃、姉夫婦に連れられて行った映画館で
観たのが、李香蘭改め、山口淑子と共演の「白夫人の妖恋」
当時はゴジラ以上の東宝特撮技術に驚かされたが
今、改めて観ると名匠・豊田四郎監督作品らしい
魔界のものとの禁断の恋が幻想的に描かれて素晴らしい。
60年代に入ると流石に脇役にあまんじたが
石原慎太郎脚本、篠田正浩監督の「乾いた花」で演じた
虚無的なヤクザ役が評判を呼ぶ。
その頃、有名俳優達が暴力団に拳銃を密輸していたのが
警視庁に摘発され、芸能界と暴力団との癒着が問題となった。
(まあ、それは、今も同じだが)
当時、日本俳優協会の理事長であった彼は代表として
暴力団との絶縁をキッパリとマスコミに表明した。
しかし、皮肉な事に彼が再び銀幕で再評価されたのは
映画のクライマックス「ご一緒、願います」と、健さんと
相合い傘で敵地に乗り込む彼が、やたら格好良く見えたものだ。
一方、彼の随筆家としての才能はなかなかのもので
『そよ風ときにはつむじ風』は「日本文芸大賞」を受賞している。
俳優業の他、沢山の雑誌にエッセイの連載を続け
92歳の長寿を全うした。
以前”キネマ通りで取り上げた「乾いた花」の感想を再び此処に。

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