2014年1月13日月曜日

伊福部昭の映画音楽:その7
十三人の刺客(1964年)
此れは日本映画史上では
”東映集団抗争時代劇”と呼ばれるジャンルの作品だ。
当時の東映京都撮影所は時代劇を得意とする
俳優やスタッフに豊富な人材を抱えており
此の様な敵味方入り乱れて戦うというスタイルは
「十七人の忍者」を始めとして多く作られた。
中でも新進気鋭の監督・工藤栄一のメガホンで
白黒ドキュメンタリー風に撮られた、此の大立ち回りは
低迷していた日本の時代劇に風穴を空けるものであった。
脚本は後に池宮彰一郎のペンネームで
「四十七人の刺客」を書いた池上金男。
異常性格で極悪非道をつくす君主(菅貫太郎)が明石藩におり
その性癖を知らぬ兄の将軍が老中として彼を江戸に迎えようとする。
そうなったら幕府は滅びると判断した
現老中(丹波哲郎)は、選りすぐりの刺客十三人
(片岡千恵蔵、嵐寛寿郎、里見浩太朗、西村晃など)を集め
参勤交代途中の、その暴君の暗殺を計る。
しかし暴君には切れ者の参謀(内田良平)が付いており
暗殺に気付いた彼の判断で途中の策略は悉く阻まれる。
その暴君に娘と婿を虐殺された尾張藩の老侍(月形竜之介)の
命を賭けた抵抗に大名行列は追いまれ
クライマックスは中山道・落合宿での対決と成る。
刺客側は数々の罠を仕掛け、
多勢に無勢(53人対13人)の不利を補い
切腹を覚悟の上、武士の面目をかけ戦う。それは
さながら黒澤明の名作「七人の侍」を彷彿とさせるものであった。
監督・工藤栄一は徹底したリアリズに拘り
関ヶ原以来、戦さの無かった武士の戦いのずだからと
明石藩の侍には殺陣を付けず、剣道の上手な刺客たちと
無心に戦わせ、それを手持ちのカメラで撮り、
躍動感を出したというエピソードが残って居る。
(さぞかし切られ役の俳優たちは怖かった事だろう)
そんな迫力ある場面に伊福部の高揚感ある音楽が勢いを付け
そしてラストの無数の死体が転がる凄惨な宿場跡には
無常観を強調する旋律が用意された。
その動と静のコントラストこそ、此の映画のすべて
此の作品を観ている時代劇ファンなら誰もが
ベスト-10の上位に入れる此の名作
スタッフの懸命な労力と多額の予算をかけた割りに
当時、あまり観客を動員出来なかったという。
それにより東映は鶴田浩二や高倉健の任侠路線に切り替え
本格的な時代劇は衰退を一歩を辿る事になった。

此の作品、2010 年に三池崇史監督によりリメイクされ
敵の数も300人対13人と増やし
更にアクションも大掛かりにして
エンタテイメント性を色濃く押し出したが
先の作品より予算を数倍かけたにもかかわらず
やはり先の作品の完成度に遠く及ばず
名作のリメイクの難しさを感じさせたものである。

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