2013年9月16日月曜日

鬼平犯科帳(中村吉右衛門シリーズ)
スペシャル版「大川の隠居」
今、私が楽しみにしている時代劇といえば
BSで月曜日再放送している此の「鬼平犯科帳」
丹波哲郎、萬屋錦之助は鬼平には”強面”過ぎるが
中村吉右衛門のシリーズは比較的合っている様な気がする。
彼が合っていると云うより周りの密偵たちの
キャスティングが良い。
相模の彦十:三代目江戸家猫八
おまさ:梶芽衣子
小房の粂八:蟹江敬三
伊三次:三浦浩一
大滝の五郎蔵:綿引勝彦
どれも池波正太郎の原作に限りなく近い。
でも回に依っては物語の核となる
盗賊の俳優が全くミスキャストだったり
演出の出来が悪かったりと空振りする事も有るが
最近、観たスペシャル版「大川の隠居」は完成度が高かった。
本題の「大川の・・」に「掻堀のおけい」「流星」と
池波の原作を3本合わせて緻密に練られた脚本が良い。
それに贅沢な配役
老盗賊(今は船頭)浜崎の友蔵に大滝秀治
大阪から来た盗賊・生駒の仙衛門に財津一郎
その愛人・掻堀のおけいに平淑恵と
芸達者を揃え、それぞれのキャリア=経歴が台詞以上に
リアルな人物像を浮かび上がらせた。
大滝秀治の老盗賊は昔惚れた女の息子を堅気として育てるが
大阪の盗賊一味が、その息子を人質に
盗んだ金の運搬に彼を船頭に雇う。
その前に鬼平と偶然出会った船頭は
”大川の隠居”こと巨大な鯉を一緒に観て心が通い合う。
そう池波正太郎の世界は男と男の情で成り立っている。
罪を犯す方、それを捕まえる方と敵味方と別れながら
それぞれに通う情が描かれているのだ。
この情が通い合う処で大滝秀治の演技が素晴らしく
先頃亡く成った此の名優が惜しまれる。
勿論、ひとかけらの情も持たない、極悪非道な奴も居るが
それは鬼平が、たたっ切てしまうか獄門にかける事で
観るものはカタルシスを得られる。

「血頭の丹兵衛」
そして、嬉しい事に、まだ元気な名優・蟹江敬三が
小房の粂八を演じた第一シリーズ4話の「血頭の丹兵衛」の出来が良い。
まだシリーズ初めだから、粂八は鬼平の手下では無い。
盗人として島送りに成るのを鬼平に頼み
粂八が師と仰ぐ盗賊の”血頭の丹兵衛”(日下武史)の
濡れ衣を晴らすと放免してもらうのだ。
しかし、ようやく見つけた丹兵衛は粂八が思って居た様な
師では無く成っていた。
情が通ったはずの男の世界を蟹江敬三が
丁寧に演じて泣かせる。
此の奥目の個性的な俳優は悪役ばかり演じていたので
プライベートでは子供たちが肩身の狭い思いをしていたと
いつかインタビューに答えていたが
彼が登場しただけで画面に真実味が出て来るから凄い。
まあ、そんな訳で、いづれ
載せたい俳優が続々出て来るのも
「鬼平犯科帳」の楽しみの1つ。
そして意外なのは、シリーズ初期では、今をときめく
柄本明や香川照之が、まるで目立たない同心役で
チラッと出ている事。
彼らは、どんな想いで出演していたのだろう。
特に吉右衛門と同じ歌舞伎に最近入った香川は・・・。
もう一つ蛇足だが
此のシリーズには、必ずと言って良い程
「水戸黄門」や「大岡越前守」には無い、濡れ場が出て来る。
それも濃厚な・・・。
池波の”食”の話は有名で私も江戸料理として参考にしているが
実は彼の”性”の表現は巧みだ。
そこには女の情では無くて、業の様なものが感じられる。
現代にも居そうな悪女の、それを描いて渡辺淳一以上
TVで早い時間に観てドキッとさせられる。
そんな処も池波ファンは、とっくに御承知だろう。


2 件のコメント:

  1. さんせっと2013年9月17日 8:52

    吉右衛門シリーズ 良いですよね。
    時代劇を、守っていってくれるみたいな安心感有りますね。
    時代考証の参考にと、観るって感じかな小生は…
    エンドロールの音楽「ジプシーキングスのインスピレーション」CD買っちゃいました。

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  2. 回によって当たり外れは有りますが
    時代考証を生かす照明に
    カメラ・フレームの決まり具合
    まだまだ時代劇は大丈夫と
    落ち着いて観てられます。

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