2012年11月6日火曜日


サハラに舞う羽
録画したものの暫く放って置いた此の映画をやっと観た。
物語は此の予告編で何となく掴めると思うが
19世紀末、大英帝国が世界の四分の一を支配下にしていた頃の話だ。
英国領スーダンの反乱軍を鎮圧するべく派兵される前日
将軍を父に持つエリート仕官の青年ハリーは
その派遣に疑問を持ち除隊してしまう。
連隊の仲間達から臆病者の象徴とされる羽を送られ
婚約した恋人からも更に羽が届いた彼は
何故か連隊を追って、ひとり戦地スーダンへ向かう・・・

此の青年を演じているのが夭折したヒース・レジャー。
私は「ダークナイト」のジョーカー役しか知らなかったので
此の映画で端正な顔立ちのナイーブな青年から
「ミッドナイト・エクスプレス」の様なワイルドな汚れ役まで
幅の有る演技をこなしているのに驚いた。
彼の死をファンが惜しんでいるのも解るような気がする。

そして、もっと驚いたのは監督のシェカール・カブール。
此のインド人監督はケイト・ブランシェット主演の
「エリザベス」で、そのダイナミックな映像作りを見せていたが
此の映画では更にサハラ砂漠を「アラビアのロレンス」ばりの
スケールで描いて見せている。
砂漠の光の陰影を巧みに使い、迫力有る戦闘場面ですら美しい。

カメラは誰だ?と調べたら、ロバート・リチャードソン。
オリバー・ストーンと組んで「プラトーン」「JFK」
レッドフォードと「モンタナの風に抱かれて」
タランティーノと「キル・ビル1&2」と見事なキャリア。

もう一つ記憶に残ったのが主人公を助ける
黒人奴隷役のジャイモン・フンスー。
このアフリカ系の原形を完璧に留めている俳優は
西アフリカのペナン・コトヌー出身
「アミスタッド」「グラディエーター」そして
「ブラッド・ダイヤモンド」と、いつも主役を食ってしまう
出て来ただけで存在感を漂わせ、映画に不思議な魅力が出る。
13歳でパリに来て、ホームレスまでしていたところを
デザイナー、ティエリー・ミュグレーに見いだされ
ファッション・モデルになってアメリカに渡り
先の「アミスタッド」で性格俳優として注目された。

原題“The Four Feathers"4枚の羽に取り憑かれ
自ら招いた過酷な運命とはいえ
サハラ砂漠を単独で横断するは
敵中にスーダン人に化けて同僚を救いに行くはと
彼は卑怯者どころか怖いもの知らずの男だったというワケ。
それを繊細なヒース・レジャーがやるから危なっかしくて
観ている方は面白い、まさにハマリ役。


英国文学の古典的名作の映画化だから流石に
現代感覚からするとモラルなど理解し難い部分もあり
シナリオも強引に感じるのはオンエアで
何処かカットされた部分もあるようだ。
それでもサハラ砂漠を舞台としたスペクタクルな展開は
アクション映画として充分楽しめた。
だからラストの甘いエンディングも許そう。









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