2025年12月6日土曜日

小沢栄太郎(1909~1988)
大滝秀治が”怪優列伝”で小沢栄太郎を”悪役列伝”に入れるのは
かなり抵抗があるが、しかし彼の演じた役は
吉良上野介を始めとして、ほとんどが悪役だから間違いは無いだろう。
それでも戦前の左翼新劇から、千田是也や東野英治郎と
俳優座を立ち上げた日本演劇界の草分け的人物。
”おていちゃん”こと沢村貞子と同様、戦前は思想弾圧で
刑務所に1年間も入れられた芯の強い人でもある。
そんな彼が先の大滝秀治の後の回の「痛快!河内山宗俊」
第20話"おれとあいつの忘れがたみ”に出て、
吹替なしで三味線を弾いたのには驚いた。
えっ彼にそんな特技があったかと調べてみたら無い様だ。
此のドラマの主役の河内山宗俊を演じているのは勝新太郎
実は長唄三味線方・杵屋勝東治の次男。
だから子供の時から三味線をみっちり仕込まれている。
その彼が長唄を歌い、小沢栄太郎が三味線で伴奏を。
ドラマでは彼らは昔、長屋で隣り同士、その頃、河内山は彼に三味線を習ったという設定。
驚くのは、その手元のアップからカットを割らず
小沢栄太郎の顔までカメラはパンしている。
恐らく此のシーンのために小沢栄太郎は
勝新太郎から三味線の特訓を受けたに違いない。
後年、俳優座で「セチュアンの善人」など演出家として
活躍した小沢栄太郎は手元のアップ吹き替え無しで本物感を出したかったのかもしれない。
臨終の床で河内山が弾く三味線の音色が泣かせる。
私の知る小沢栄太郎は日本の政治家や白い巨塔で
いわゆる”巨悪”の根源を演じていた役者。
此の様な宇野重吉がやる様な優しい役は初めてだろう。
なんだ”良い役”も出来るんじゃないの。
勝プロ製作の此のシリーズ
座頭市ほどチャンバラがなく”痛快!”とは言い難いが
勝新太郎はプロデューサーとして
原田芳雄、火野正平、桃井かおり、そして大滝秀治と
(桃井以外は皆亡くなっているが・・・)
当時の魅力的な俳優をキャスティングしている。
此の回の監督は「十三人の刺客」の工藤栄一。
水や光の映像も美しいと思ったらカメラは森田富士郎。
もちろん美術は京都撮影所の黒幕・西岡善信、すべてが完璧だ。
尻上りに調子の出て来た此のシリーズ後3回で終わっちゃうんだな。

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