「サンセット大通り」(1950):ビリー・ワイルダー監督作品
後にジャック・レモン等とコメディ映画で名を馳せる
此の映監督の初期のシリアス・ドラマである。
ハリウッドの内幕物としては同じ年の「イブの総べて」とオスカーを争い
数では負けているが、それでも監督賞と女優賞作曲賞の3部門を得ている。
たまたま此れを観る前に
BS放送大学で「サイレントからトーキーの流れ」を観たので
主演女優のグロリア・スワンソンの心情がよく伝わった。
話は、そのままサイレント映画のスターがトーキー時代に乗り遅れ
豪邸に住んでいるものの過去の栄光を反芻している。
そこへ借金に追われた売れない脚本家(ウイリアム・ホールデン)が
偶然、飛び込んできて一緒に彼女の新作の脚本を作ることになる。
監督ビリー・ワイルダーは如何にもアメリカンなイメージだが
元々ユダヤ系ドイツ人監督でナチスから亡命したハリウッド移民。
その脚本兼監督としての才能は早くから評価され
此の作品の前「深夜の告白」という名画を撮っている。
それと同じように、これも結末を先に出す捻った脚本。
いわゆる”フィルムノワール形式”だ。
観客は、それを知りつつ話の展開に魅せられる。
ハリウッド大スターの豪邸だから、そのセットも凄いが
演出のディテールにヒッチコック並みの映画言語が組み込まれ
早くも此の監督の並々ならぬ才能を感じさせる。
題名の”ハリウッド大通り”は邦題で実際は"Sunset Boularvd"だが
映画の中で主人公が”囲われの身”から屋敷を抜け出し
脚本家志望の若い女性とパナマウント撮影所内の事務所で、
新作の脚本を練る場面から深夜のオープンセットを歩くとき
”これは偽物の路地だけれど落ち着く”という台詞が
ハリウッドの表と裏を象徴している巧みな脚本だ。
ラストのグロリア・スワンソンの狂気の演技は全ての伏線が
其処に集結してオスカー主演女優賞も宜なるかなである。
それは彼女自体が此の映画の本質に迫る存在だから。
そして此の映画には皆、本物が出ている。
彼女の屋敷に招かれる過去のスター達にバスター・キートン。
嘗ての喜劇王が居心地悪そうにカードをしている。
また彼女を撮影所でかつてのスターとして
大事に扱う監督セシル・B・デミル役が
やけにリアルな演技をすると思ったら、
映画史上の大監督セシル・B・デミルを本人を演じて居る。
何という凄くて残酷なキャスティング。此の映画は本当に面白い!
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