「居眠り巌音」(2019):本木克英監督作品
佐伯泰英の人気時代小説の映画化である。
意外にも主演の松阪桃李は初の時代劇らしいが
もともと若手にしては表情の乏しい此の俳優
剣道の立ち会いに”居眠り”と呼ばれる剣法にぴったり。
実は私、子供の頃、近所の耳鼻科の先生の息子と一緒に
胴着をつけて、ほんの少しだが剣道を習っていた事がある。
だから”間合い”とか”小手”が大事な事は覚えている。
幼なじみ3人のその道場での稽古で始まる此の映画に
冒頭から取り込まれた。
”幼なじみ3人”と言えば藤沢周平の「蝉しぐれ」
あちらはラストに、その3人が力を合わせるが
此の物語は早いテンポで、主人公は友達2人を
斬り殺す命を上司から受ける。
しかも1人は、その妹が自分の許嫁なのだ。
今、大河ドラマの主人公を演じている柄本佑と
子供向けヒーロー物上がりの松阪桃李
その気合いの入った殺陣のレベルは確かで
「水戸黄門」と「大岡越前」で死にかけた
日本の時代劇はまだまだ大丈夫と安心する。
物語は、ほぼ藤沢周平の世界、参勤交代に
江戸と地方の九州豊後の二か所で展開するが
許嫁の兄を切った主人公は江戸で浪人暮らし
長屋の大家の娘の口利きで鰻職人を始める。
此のあたりから話は高田郁の”みおつくし料理帳”になって来る。
そう許嫁が江戸に出てきて花魁になる辺りがね。
劇画の様だが、丁寧に撮った映像で許そう。
そして主人公は両替屋の用心棒にも雇われ
田沼意次の政策の転覆を図る悪徳両替屋と戦う羽目になる。
この悪徳両替屋を柄本佑のお父さん柄本明が怪演する。
悪役が強いほど映画は面白いからね。
主人公に想いを寄せる大家の娘に木村文乃
その父親に中村梅雀と無理のないキャスティング。
脚本も良く、しっかりした演出は観応えを感じた。
0 件のコメント:
コメントを投稿