2024年8月16日金曜日

「タイ・カップ」(1994) : ロン・シェルトン監督作品
”悪役列伝”に最初の方に登場した某缶コーヒーのCMキャラクターの
トミー・リー・ジョーンズ主演。
強面の彼に相応しくプロレスでも無いのに、
現役時代そのラフ・プレーから米国プロ野球界の”悪役”として
名を馳せた選手タイ・カップのドラマである。
監督ロン・シェルトンは元プロ野球選手から映画監督に転向した変わり種。
そんな経歴が買われてか、ケビン・コスナー主演で
「さよならゲーム」と言う野球映画を撮っている。
同じケビン・コスナーで「ティン・カップ」と言う映画もあるから
私は、てっきりゴルフ映画かと勘違いして
観ていなかったが昨夜、台風の迫る中、此の映画を観始めたら夢中になった。
タイ・カップ事、本名タイラス・レイモンド・カップは
米国プロ野球の黎明期、数々の記録を打ち立てた、
あのベイ・ブルースと並ぶ名打者。
その彼が晩年、自分の伝記を書くのに雇った1人のスポーツ記者との
凄まじいやりとりが此の映画。
その関係は"雇われライター"だから、主と従で力関係は
自ずと明白でハロルド・ピンターの舞台劇「ドレッサー」を思い起こさせる。
取材で一緒に暮らす内、主従を越えた友情と憎悪の入り混じる
何とも不思議な二人の関係がドラマとなっている。
オーソン・ウェルスの「市民ケーン」の”バラの蕾”の様な
タイ・カップの生い立ちの謎解きも隠されており
トミー・リー・ジョーンズの迫力ある怪演と相まって、
始めから終わりまでスリリングな展開・・・と言うのも
強引に自分の栄誉を書け!と押し付ける雇い主に対し
記者役アル・スタンプを演じたロバート・ウールの怯え方が
コメディアンのそれで、見事な受け皿と成り、
さぞかし撮影現場は面白かった筈だろう。
様々なアメリカ野球の記録を更新し
"野球殿堂入り第一号選手"の輝かしい伝説の裏の顔は、もう無茶苦茶、出鱈目。
やたら拳銃をぶっ放し、気に入らない相手は殴る蹴る、
その暴力沙汰と八百長試合は金で揉み消し、
黒人とユダヤ人への人種差別など今なら野球以前に生き残れない男だが。
何故か記者は彼の言うまま栄光の輝かしい伝記に、
もう1つの別の実像伝記を内緒で書き始める。
さて俺が死んだら出版しろと言うタイ・カップの死後、
さて彼はどちらの伝記を発表したであろうか?
兎に角、謎の多い人物で野球を頭で計算して居たとか、
株で大儲けをした資産家でもあったとか
実像は掴みどころの無い人物だったようだ。

私は”ベースボール・ムービー”と言うジャンルで
「がんばれベアーズ」「フィールド・オブ・ドリームスの等の
野球映画集のDVD-BOXを作っているが
此れは、そのジャンルからハミ出した作品と言える。

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