2024年7月18日木曜日

「座頭市物語」 第5話”情け知らずが情けに泣いた” 監督 安田公義
大映が倒産して勝プロが製作したTV座頭市の5作目の此れも出来が良い。
勝新太郎が所謂白塗りの2枚目から”汚れ”で成功した「座頭市物語」の
1作目をほぼ踏襲した此の脚本は池田一朗
天知茂の役を黒沢年男が
市が地方のヤクザ同士の争いに巻き込まれるのも同じ
市と浪人に友情が生まれ、その二人がラストに対決するのも。
それでいて少しもマンネリと感じさせないのが
それまでの展開を達者な脇役、子役そして敵役を揃えているから。
先ずは冒頭、夜明けの太陽に市が
”どうか、おてんとうさん、ワタシの目をあけさせておくんなさい!”
と祈る姿が切ない。
盲目の人の悲しみと辛さを勝新はいつもドラマに盛り込んでいた。
監督 安田公義は”大魔神”などで子役の選び方演出が上手い。
馬の尻尾に掴まる市をタダで馬に乗せてやる馬子役の少年の芝居が実に達者。
そして、その父親役が常田富士男で此れが又自然と言うか怪演
ダメな父親で息子に馬子させてるは娘を博打のカタに売り飛ばすわ
その娘を狙うヤクザの親分が富田仲次郎。
此の悪役面は上田吉二郎以上、大映を中心に悪役専門
そして、その子分に此れ又、日本映画の卑怯な役専門だった松山照夫。
此の二人の悪役が強い程映画は面白い!の定説を盛り上げる。
話を市と対決する黒沢年男に戻すが
東宝の青春スターで歌まで上手で
あの加山雄三の脇に甘んじていた彼は結局
泣かず飛ばずでフリーになったが演技は確か、前作の佐藤允よりずっと良い。
やはり盲目の妹の薬代を稼ぐためにヤクザの用心棒になっているが
市と気が合い、その妹(市毛良枝)も紹介する程仲良くなるが
先のヤクザの親分の企みで対決する羽目に。
この殺陣のアングルもそうだがカメラ森田富士郎が素晴らしい。
市が女郎に売られる娘の金を稼ごうと行く賭場の映像の美しさ
”悪名”や”女賭博師”シリーズで培われた
その場の緊張感を見事に再現している。
音楽は冨田勲。全編に漂う無情感は「飢餓海峡」に繋がり
TVドラマの脇を越え、此のシリーズは何度再放映されても
つい観てしまう完成度。

あっ、7月22日8:55~10:00 BSフジで前回紹介した勝新が監督した
十朱幸代の「忘れじの花」のオンエアが有るからね。

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