2023年12月6日水曜日

「アルキメデスの大戦」(2019):山崎 貢監督作品

先日、リドリー・スコット監督の「ナポレオン」を観て

そのスペクタクル場面の完成度に驚いたばかりだが

此の日本映画の特撮にもビックリした。

冒頭、いきなりクライマックスの様な、

戦艦大和が敵の攻撃を受け、その巨体が沈没するシーンから始まる。

クリストファー・ノーランの「ダンケルク」の空爆と

軍艦からの砲撃の撃ち合いが続き、魚雷を受けて

「タイタニック」の沈没場面の様に甲板が傾き、

海兵たちがズルズル落ちて行くという凄まじい場面だ。

嗚呼とうとう日本でもCGでこんな映像が

作れる様になったんだなあとシミジミ・・・

と言うのは数十年前、CMでハリウッドの特撮を使うと言う仕事で

L.A.のデジタルドメインというマリブの本社に打ち合わせに行ったのだが、

そのタイタニックの合成画面の仕掛けをヴィデオなのに

フィルムと同じ様な巨大なスクリーンで見せられた時、

コリャ日本より、だいぶ進んでいると思ったものだ。

さて此の映画だが、

そのプロローグの何年前というタイトルが入り、

日本が太平洋戦争に突入する前の話だ。

これからは戦闘機が主流の航空母艦が必要と言う進歩派と

出来るだけ巨大な戦艦を作って敵を脅かすと言う保守派の

2派が、その造船計画についての議論する。

保守派の巨大戦艦の見積もりが安く

そちらに決まりそうなのを、進歩派が、その見積もりは

いい加減だと反論、その本当の予算はどうなのだ?と。

そこに登場するのが、西の湯川秀樹、東の櫂と呼ばれた

数学の天才学生。

此れを演じるのがミステリーと言う勿れの菅田将暉。

本人は漫画好きで仮面ライダーの主役から俳優デビュー

その後の活躍は、まさに電光石火の如し

様々な映画に主演、日本アカデミー賞新人賞

「鎌倉殿の13人」では源義経を演じた。

偶然かもしれないが彼は実際に根っからの数学好きで

此の映画でも黒板にスラスラと方程式を書きスタッフを驚かせたらしい。

私は知らなかったが原作はヤングマガジンに連載された漫画。

恐らく読んだ菅田は主人公は自分の役だ!と思ったに違いない。

巨大な戦艦の造船予算をたまたま停泊していた普通の戦艦の

甲板サイズを巻き定規で測り、原寸を割り出し

図面に起こし、更にその予算を大阪の造船業者を口説き落とし

割出すと言う作業を数日でやってしまう。

アルキメデスの大戦をする此の役は

澄んだ瞳と、危ない狂気を孕んだ菅田将暉に打ってつけ。

他にも彼の補佐を言いつけられる柄本佑や

舞踏家の田中泯が適役でドラマに厚みを与えている。

監督の山崎貢は三丁目の夕日のダサい脚本に中途半端な特撮で

馬鹿にしていたが、此の作品をみる限り

いつの間にか、力を付けた様だ、「ゴジラ-10」観に行かなきゃ!

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