2023年11月18日土曜日

「復讐の荒野」(1950年):アンソニー・マン監督作品
日本未公開映画であるがNHK BS-2でオンエアされた。
まるでマカロニ・ウエスタンの末期の様な題名であるが
原題は"The Furies=復讐の女神"とも訳せば良いか?
兎に角にも西部劇のスタイルをとっているが
中身はギリシャ悲劇。いやグリム童話の白雪姫の様でもある。

原作はニーヴン・ブッシュ。小説家で有るがハリウッドに招かれ

「郵便配達は2度ベルを鳴らす」「白昼の決闘」などの脚本を書く

舞台は米国ニューメキシコ州
そこで見渡す限りの広大な土地に王の様に君臨している
独善的な牧場主(ウォルター・ヒューストン)と
その娘(バーバラ・スタンウィック)との確執を
激しいドラマにしている。
勧善懲悪や先住民族との戦いを描いた西部劇とは全く異なる
人間の欲と業のファミリードラマとでも言えば良いか?
娘と言っても適齢期はとっくに過ぎて
父の留守に牧場を守る男勝りの気丈な女である。
こんな気の強い女は「大砂塵」のジョーン・クロフォードを
思い浮ぶが、男しか出て来ない西部劇の中で
酒場女以外は、そうするしか生きられなかったのかも知れない。
運命の悪戯か?彼女はその牧場主に、父を殺され土地を奪われた男と
現在恋仲、父親はその結婚を許す筈もなく男を金で追い払い。
しかも、とんでもない強欲な年増女を出張から連れて帰り
白雪姫では無いけれど自分の娘を牧場から追い出す。
此れに彼女とは幼なじみのメキシコ人の男が絡み
元々は彼らから奪った土地を取り戻そうと家に火をつけたり
とうとう、その幼なじみを首吊りにした事で
娘は父親に復讐を誓い、先に無理やり離された男と組んで
大牧場の株を買い占め父親を破滅に追いやるという執念深い話。
此の映画はモノクロだから
アリゾナ・ロケの断崖絶壁に繰り広げられる背景が
映画「エレクトラ」のギリシャの風土を連想させて
魔女と恐れられたメキシコ人の母親は
まるでギリシャの名女優のイレーネ・パパス!
しかし1950年代に、それは有る筈もなく監督アンソニー・マンの
イメージの豊かさと構成力に感服させたれた。

監督アンソニー・マンと言えば
西部劇の傑作「ウインチェスター銃73」や
「怒りの河」「西部の人」「シマロン」何れも西部劇ながら人間性を描き
「スパルタカス」で製作も兼ねていたカーク・ダグラスと揉めて降板した後も
70mm「エル・シド」「ローマ帝国の滅亡」と
ハリウッドの”エース格”であった。
此の映画でも見渡す限りの荒野を何万という牧牛の移動シーンや
メキシコ人の銃撃場面のスペクタクルに並々ならぬ力量を感じさせる。


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