タイトルに”カーテン”とあるのは名探偵ポアロの”幕引き”を意味する。
もう何度も観た筈だがなん度観ても胸を打たれるポアロの最期だ。
此のシリーズが始まったのは1989年だから此れが制作された2013年で
足掛け24年経っていることになる。
ドラマの上で引退したポアロにかつて惨劇のあった”スタイルズ荘”に
呼び戻された相棒ヘースティングも流石に老人の風貌
更にポアロは、もっとヨボヨボで車椅子に乗り、猫背で目の周りは
狸のように黒ずんでいる。
役作りのメイクアップといえシリーズの歳月にリアリティを感じる。
ポアロが相棒を呼んだのは彼の娘がそのスタイルズ荘に居て
彼ら親子の確執を友人として納めようとの狙いもあると後で分かる。
でも本当の目的は、その屋敷に居る、ある男が実はとんでもない卑劣な奴で
関係のある人を唆(そそのか)し相手を殺させる
所謂、殺人教唆嗜好を止める為。
自分はもう動けないからヘースティングに目や耳を使わせて
その男の情報を集めさせる。
しかもヘースティングはシリーズを見ていれば分かるように、
その男を教えれば顔に出てしまうからポアロは犯人を教えない。
此れに観ているこちらも誰だ誰だ?と惑わされる実に巧みな語り口。
*この辺りからネタバレだから観てない人は先を読んでは駄目*
ポアロは、その後起きた殺人事件の背後に必ず居た男に焦点を当て
彼の行動を柄スティングに監視させるが
その間にヘイスティング自体が彼の罠にかかり
娘を守ろうと殺人をしようとするのをポアロは阻止し
更に自ら有ってはならない犯人の処刑という行為を始めるのだ。
先ずは犯人を部屋に呼び、相手に全ての殺人は彼の教唆だったと認めさせる。
しかし犯人は弱っているポアロに、お前に何ができると開き直る。
ポアロは言葉巧みに犯人をココアで眠らせ
近くの部屋で寝て居たヘイスティングを起こしてまでも、
その犯人に化けて彼が部屋に戻った風に見せ
そう、ポアロの弱った身体、実は偽装で彼は車椅子無しでも歩けるし、
実はあの有名な髭は、何と付け髭だったと・・・
此れには、まあ私もビックリポン!
髭のない名探偵ポアロ=デヴィット・スーシェの顔は
誰も見たことも無いからね。
ココアで眠らせ車椅子に乗せて部屋に戻した犯人を
ポアロはピストルで射殺し拳銃を握らせ自殺に見せかける。
それはともかく事の真実を、ヘースティング宛の手紙に書き留め
自分が死んだ4ヶ月後に開封しろとポアロは書き残し
心臓発作が出た時、飲むはずの薬を飲まずに自殺する。
「オリエント急行殺人事件」で乗客全員が犯人を処刑した時
彼らを断罪すべきか悩んで結局、許したポアロの正義は
泣いて悔しがるほど強かったのだから
自分が殺人を犯すなどあり得ない話で自分は死ぬしかない訳だ。
しかし私は、その殺人教唆の犯人が、
ポアロに額を撃ち抜かれる瞬時少し微笑んだように見えた。
その表情は、彼が自分の罪が此れで全て神に許される?
いや、ポアロお前もワタシの唆しの罠にハマったな?なのかは
原作者アガサ・クリスティのみが知る凄い結末 。
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