「日曜日が待ち遠しい」(1983):フランソワ・トリフォー監督
長短編を交えると生涯25本作品を残した彼の此れは遺作である。
そして主演女優のファニー・アルダンとは1981年に結婚し、娘まで作り
だから彼女は”トリフォーの"最期の女”という事になる。
先に「隣の女」で抜擢した彼女に夢中になったトリフォーは
彼女とミステリー作品を作ろうとチャールズ・ウィリアムス原作の
「土曜を逃げろ」を彼女用にアテ書きした此の脚本で映画化
「日曜日が待ち遠しい」となった訳。
如何考えても殺人犯としか思えない不動産会社の社長
ジャン=ルイ・トランティニアンのアリバイを証明しようとする
社長秘書ファニー・アルダンがやたら走り回って活躍する映画である。
ジャン=ルイ・トランティニアンは此の時、
すでに「男と女」のカー・レーサーの格好良さは無くタダの中年男。
それでも何故か女を夢中にさせる”何か”を持っているのは
ヨボヨボになってアヌーク・エイメと「
男と女人生最良の日々」で実証されている。
とにかく映画の中でも出て来る、3人も殺しているのに
”フランスの陪審員は恋愛絡みの犯罪に甘いから自首すれば大丈夫、
無罪になるよ”と勧める友人弁護士に
それはダメよダメダメと、パリからニースまで車を飛ばし
命懸けで無罪の証拠を集める彼女は
174cmでトランティニアンの173cmより大きい.
そのコンビは主演女優と監督トリフォー168cmと重なる。
ヌーベルヴァーグの仲間ゴダールとはカンヌ映画祭ボイコットを機に
袂を別ちゴダールが映画の政治的革命を目指すも、
彼は映画そのものに拘り
「大人は判ってくれない」で自らの少年時代
「アメリカの夜」で映画制作現場を描いた此の監督は
最後まで私小説的映画の作風を貫いた。
”ずっと前から貴方のことを好きだったのよ!”と彼女に告白させたラストは
原作のミステリー小説には恐らく無かったろう。
0 件のコメント:
コメントを投稿