市川雷蔵の此のシリーズ8作目
脚本は大御所の伊藤大輔だが原作の柴田錬三郎は
”此れは眠狂四郎では無い”と不評だったらしい。
ところが如何して結構面白い。
先ず話が江戸時代天保の頃、大阪で起きた”大塩平八郎の乱”を基に
大塩平八郎は圧政に立ち上がった町与力にして学者
天一坊事件と同じ江戸時代には珍しいクーデター計画だが
結局、鎮圧され処刑された。
その大塩の仇を討とうと残党(天知茂)が江戸に集まり
当時、越後から産出されていた原油(くそうず=臭い水)の利益を独り占めしようとしていた商人を利用し、江戸の町に火を放ち、そのドサクサで仇の矢部仙十郎を討とうと目論む。
此れに同じく矢部仙十郎を仇と狙う軽業師の女(藤村志保)が絡み
それを知って阻止しようとする狂四郎と
話は三つ巴のバトルロイヤル。
此の作品の魅力は市川雷蔵の円月殺法だが、何故か天知茂も全く同じ円月殺法。
ラストの三日月が映える大屋根の上の対決は見ものだ。
しかし、それ以上に此の頃、女盛りの女優・藤村志保が美しい。
彼女は市川崑が撮った島崎藤村の「破戒」でデビュー
その時の役・志保を芸名にした。
典型的な切れ長の目の日本美人。
その清楚な容姿は生きた浮世絵の美人画。
彼女に監督の三隅研次は軽業師という意外性を持たせ、バック転までやらせている。
それに敵役の天知茂は私の”悪役列伝”で紹介したから省略。
興味深いのは仇の矢部仙十郎役の永田靖。
戦前から新劇役者として舞台で活躍
映画には独立プロ作品から東映お子様時代劇まで幅広く出演。
山形勲と同様、日本映画に欠かせぬ名優。
狂四郎と 巨悪老中の二人きりでの腹芸の迫力。
そして、やはり凄いのは監督の三隅研次!
カメラマン牧浦地志(ちかし)に思う存分アングルを探させ
今観ても、その映像の面白さには驚かされる。
勝新太郎と市川雷蔵のいわゆる”カツライス”大映時代劇の
魅力を引き出した人。
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