2023年3月23日木曜日

「眠狂四郎無頼剣」三隅研次監督

市川雷蔵の此のシリーズ8作目

脚本は大御所の伊藤大輔だが原作の柴田錬三郎は

此れは眠狂四郎では無いと不評だったらしい。

ところが如何して結構面白い。

先ず話が江戸時代天保の頃、大阪で起きた大塩平八郎の乱を基に

大塩平八郎は圧政に立ち上がった町与力にして学者

天一坊事件と同じ江戸時代には珍しいクーデター計画だが

結局、鎮圧され処刑された。

その大塩の仇を討とうと残党(天知茂)が江戸に集まり

当時、越後から産出されていた原油(くそうず=臭い水)の利益を独り占めしようとしていた商人を利用し、江戸の町に火を放ち、そのドサクサで仇の矢部仙十郎を討とうと目論む。

此れに同じく矢部仙十郎を仇と狙う軽業師の女(藤村志保)が絡み

それを知って阻止しようとする狂四郎と

話は三つ巴のバトルロイヤル。

此の作品の魅力は市川雷蔵の円月殺法だが、何故か天知茂も全く同じ円月殺法。

ラストの三日月が映える大屋根の上の対決は見ものだ。

しかし、それ以上に此の頃、女盛りの女優・藤村志保が美しい。

彼女は市川崑が撮った島崎藤村の「破戒」でデビュー

その時の役・志保を芸名にした。

典型的な切れ長の目の日本美人。

その清楚な容姿は生きた浮世絵の美人画。

彼女に監督の三隅研次は軽業師という意外性を持たせ、バック転までやらせている。

それに敵役の天知茂は私の悪役列伝で紹介したから省略。

興味深いのは仇の矢部仙十郎役の永田靖。

戦前から新劇役者として舞台で活躍

映画には独立プロ作品から東映お子様時代劇まで幅広く出演。

山形勲と同様、日本映画に欠かせぬ名優。

狂四郎と 巨悪老中の二人きりでの腹芸の迫力。

そして、やはり凄いのは監督の三隅研次!

カメラマン牧浦地志(ちかし)に思う存分アングルを探させ

今観ても、その映像の面白さには驚かされる。

勝新太郎と市川雷蔵のいわゆるカツライス大映時代劇の

魅力を引き出した人。

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