黒澤明の映画音楽#13
どですかでん(1970):武満徹
「赤ひげ」の後、様々な事情でクロサワは映画が撮れなくて
長いスランプの後、作ったのが彼にとって初のカラー作品の此れ
「赤ひげ」「椿三十郎」に続く山本周五郎原作だが
時代劇ではない「季節のない街」。
以前に撮った「どん底」にも似た社会に取り残された人々を
子供が初めてクレヨンを与えられた様にカラフルに描いた。
「赤ひげ」のネズミ役の天才子役 頭師佳孝を主役に
仲良くお題目を唱えている母親は又菅井きん!
お馴染みの黒澤ファミリーとも言えるキャスティング。
スタッフも美術の村木与四郎にカメラは斎藤孝雄と万全の構え
でも、そこに音楽佐藤 勝の名前はなく武満徹が参加した。
武満は既に小林正樹監督の「切腹」「怪談」の映画音楽や
和楽器とのオーケストラ「ノヴェンバーステップス」が
海外で評価を得ていたこともありクロサワが興味を示したと思われる。
一方、佐藤 勝も日本映画界で「太陽の季節」「五番町夕霧楼」と
既にエースの座を得ており、恐らくクロサワの”パワハラ”に
耐えられなくなってきていたのかも知れない。
それは兎も角、此の「どですかでん」の音楽は
武満徹の映画音楽作品の中では羽仁進監督の「不良少年」と同じ
無垢な子供の心をアコースティックギターとトイ・ピアノで
表現した素直な曲となっている。
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